態度が悪い職員の特徴
介護の現場における日々のケアは、介護職員、看護職員、リハビリスタッフ、栄養士、事務職員など、さまざまな職種が連携して成り立っています。そんなチームの中に、「態度の悪い職員」がいると、思っている以上に大きな悪影響を及ぼすことがあります。
①挨拶や返事をしない、無視する
現場では、「おはようございます」「お願いします」「ありがとうございます」といった日常的な挨拶や声かけが、信頼関係や連携の土台になります。しかし、ある職員は朝出勤しても無言で更衣室に向かい、スタッフから「おはようございます」と声をかけても反応が薄い或いは無反応で、業務中も話しかけても返事がないことが日常茶飯事でした。このような行動は、周囲に「自分は無視されている」「関わりたくないのかな」と不信感や孤立感を与えます。その結果、他の職員もその人には声をかけなくなり、連携ができなくなったり情報伝達のミスにもつながったりします。
②表情が険しい・不機嫌
言葉を発さなくても、その人の「表情」や「態度」から周囲はさまざまな情報を受け取ります。特に不機嫌な表情は、それだけで職場全体の空気を悪くしてしまうことがあります。
たとえば、ある女性職員は、朝の申し送りの場でも常に腕を組み、険しい表情をしています。仕事中も眉間にシワを寄せ、利用者への声かけも機械的な印象。新人職員が「この対応で大丈夫でしょうか」と質問しても、「は?」と言って明確な助言もありません。こうした態度を見て、他の職員は「何か怒っているのかな」「質問しづらい」と感じ、周囲の心理的安全性を大きく下げてしまいます。
③協力的でない・自分の仕事しかやらない
チームで動く介護の現場では、状況に応じて臨機応変に動くことが求められます。しかし「自分の仕事だけ」を守ろうとする人がいると、他の職員に大きな負担がかかってしまいます。
たとえば、食事介助で忙しい時間帯に、他の職員が必死に数人の利用者のトイレ介助や服薬確認をしているなか、一人の職員が記録室で座って記録を書いていました。声をかけると、「私はもう自分の担当の介助は終わってますから」と・・・。こうした行動が続くと、「なぜあの人は手伝わないのに、私たちはいつもフォローしなきゃいけないの?」と、チーム内に不公平感が生まれ、やがて不満が蓄積し、関係性の崩壊につながっていきます。
④陰口や不平不満が多い
一見、ただの“愚痴”に見える発言も、繰り返されると職場の雰囲気や人間関係に大きな影を落とします。ある職員は、休憩室でしょっちゅう「今日のシフトおかしくない?」「あの利用者、本当に面倒くさいよね」「あのリーダーって、全然仕事見てないよね」といった不満を口にしていました。それを聞いていた新人職員は、「ここは言いたい放題で、誰も助け合ってないんだ」と感じ、離職する原因にもなってしまいます。陰口が許される空気は、信頼関係を壊すだけでなく、職員の定着にも影響を与える場合があります。
⑤上司や先輩に対しての態度が悪い
上司や先輩に対して、あからさまに反抗的な態度をとる人がいると、チーム全体の秩序が崩れてしまいます。とくに新人や若手職員は、その態度を見て「この職場では、反発してもいいんだ」と誤解してしまうこともあります。たとえば、リーダーが「今週は忙しくなるので、皆さん協力お願いします」と声をかけた際、「それ、私に言ってます?」「無理なんで」と言い返してしまい、その結果、場の空気は凍りつき、他の職員もリーダーに相談しづらくなってしまいます。
敬意や信頼のない言動は、組織のまとまりを損なうだけでなく、最終的には「誰も指示を聞かないチーム」になってしまう危険性をはらんでいると言えるでしょう。
改善するよう指導しなかった場合の弊害
職場に一人、態度の悪い職員がいる、挨拶をしない、いつも不機嫌でいる、チームに非協力的で、時には陰口まで・・・。そんな姿に周囲は気を遣い、職場に緊張が走ります。そして問題なのは、それを見ている他の職員たちの心理です。毎日誠実に仕事をし、協力し合いながら現場を支えている職員たちは、ふと疑問を抱くようになります。「どうして、あの人はあんな態度でも何も言われないんだろう」「私たちは真面目にやっていても評価されないのかな」と。
改善の指導がなされないまま放置されれば、それはやがて「この職場では頑張っても無駄だ」という諦めにつながります。努力しても報われないと感じたとき、人は徐々にやる気を失い、気づけば静かに心が離れていくでしょう。その結果、真面目な職員ほど離職し、態度の悪い職員が残る――そんな負の連鎖が始まってしまいます。
本来、職場における「態度」とは、評価されるべき大切な要素であり、悪い態度を放っておけば職場全体の空気を蝕んでいきます。指導にはエネルギーが必要でしょう。指導しても反発されてしまうこともあるでしょう。それでも、問題を見過ごすことは、健全な秩序と信頼関係を壊すリスクをはらみます。だからこそ、きちんと指導し、指示・命令することも必要です。それは相手のためだけでなく、頑張る仲間の努力を守るためとも言えるでしょう。
成長する人の共通点とは?
態度の悪い人は、どこかで自分を変えることを拒み、周囲の意見に耳を貸さない傾向があります。「私は悪くない」「どうせ分かってもらえない」と心を閉ざしたままでは、どれだけ経験を重ねてもなかなか成長につながりません。一方で、成長する人、成長が早い人にはあ る共通点があります。それは「素直さ」です。
素直な職員は、注意やアドバイスを責められたと捉えず、「自分のため」と受け止める力があります。最初は失敗しても、そこから学び、次に活かそうとする姿勢があります。そして、その姿勢は周囲に好影響を与え、誰かが自然と応援したくなる存在にもなっていきます。結果として、経験だけでなく、人との関係性の中でも成長を重ねていくことができます。
実際、ある新人職員は、最初こそ不器用で時間がかかることが多く、指導も頻繁に必要でした。しかし、毎回「ありがとうございます、気をつけます」と返しては必ず改善を見せようと努力する姿に、先輩職員たちは安心し、やがて「この子なら任せられる」と感じるようになりました。わずか3年で現場の中心的な存在に成長したわけは、その職員の「素直さ」が大きな一因であったに違いありません。
職場は「人間」です。そして、人間は変わることができます。態度の悪さを放置せず、丁寧に向き合いながら、素直さを育てる文化がある職場には、必ず希望が生まれるでしょう。誰もが安心して学び合い成長するチームをつくること。それが、介護の現場をよりよくしていく大きな一歩なのではないでしょうか。