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【社会の厳しさを乗り越えるためには】 知野吉和

こんにちは。介護教員の知野吉和です。私はここ10年ほど、セミナーやブログなどで、人間関係についてのお話をしています。

以前は介護技術や、知識に関することもやっていましたが、なかなかその考え方が現場に馴染まない現実があることを知り、その原因を探っていくと、要するに人間関係の問題で、新しいチャレンジができない、ということでした。

近年レジリエンスという言葉もありますが、わかりやすくまとめると、「へこたれない自分になれ」ということなのです。

ただ、へこたれないって、根性がいりますよね。気にするな、と言われても気にしますし、強くなれ、負けるな、と言われたら、無理して生きることになりますからね。
チャレンジさせてくれない職場のあの人が悪いのか?負けずにチャレンジできない私が弱いのか?という悩みに落ちていくのです。

心理や自己啓発の本を見ると「他人は変わらない」だから自分から変わろう!というメッセージがたくさんありますが、結局のところ、そういうことなのです。めんどくさいですが、自分ができることをやって、鎧や武器を身につけるしかないのです。
人間関係に悩まないために、人間関係に強くなるということは、コミュニケーションを上手にこなしていくしかないのです。

私は私、仕事とプライベートは別ですから、と孤立するのは強さではなく、ただの逃げでしかなく、他人の介入を許してこそ、コミュニケーションが成立するのです。
では人間関係に強くなるために必要な条件は何か、という話をします。

まず1つ目は、『共感すること』です
共感性を高めましょう、ということですが、相手の話に合わせて、『そうなんだー』とか『だよねー』とあいづち、返事をしていくことです。さらに『それからどうなったの?』とか『どうして?』などと、相手の話をさらに深めつつ、相手の言いたいことや感情に合わせて反応をしていくことが大切です。ここでご紹介したセリフを使って試してみてください。まずは5分継続、そして10分、20分、とどのくらい自分が相手のためにエネルギーを使えるか、試してみたらいいのです。まずは話しやすい友達や身内からでも構いません。人間関係に悩む人の多くはこの共感性の弱さです。だって興味ないんだもん、とか、めんどくさい、とか難しいです、と言っているうちは、変化はおきません。いつか誰かが私を助けてくれるはず、と待っていても人生変わりません。
弱い人ほど待つ時間が人生の大半を占めることになるのです。待つな!動け!です。

2つ目は『協力すること』です
共感と似ていますが、あえて分けました。協力とは、セリフだけではなく、『一緒に』とか『相手のために』動く、ということです。
一緒に荷物を持つ、とか、あの人が今必要としていそうな道具を準備しておくとか、です。私が新人さんや実習生によく伝える言葉として『優れた助手になれ』と言っています。ひとりだちする前は指導係がいます。その人があまり動かなくても済むように、教えることに専念できるように、必要な道具を持っておくとか、補助的に支えるなど、指導係が無駄なく動きやすくなるように積極的に行動することが、結果として信頼されて、好かれることになります。

介護業界に限らず、社会の現実は厳しいのです。ただ、理想や正しいものを目指すための厳しさならまだ許せますが、現実の社会の厳しさとは、意地悪や悪意に悩まされることなのです。
社会は厳しいのではなくて、社会とは、意地悪で理不尽な目に合うところ、ということなのです。
だから人間関係に悩んでいる人のほどんどは、意地悪な人や、理不尽な目にあって困っている人たちです。

意地悪に対応する方法は、①戦うか、②仲良くするか、③無視するか、④離れるか、⑤従うか、です。社会で生きるということは、少なくともこの5つのスキルを使い分ける必要があるのですが、たぶん人間関係に悩む人たちは、このスキルが少なかったり、一つしか使えなかったり、使い方がわからなかったりするんでしょうね。個人的にはそういう人を見ているのは楽しいですが、困るのは本人ですよね。

意地悪をしない、させないことは非常に難しいです。意地悪は過去のが環境が関係しているからです。自分がされたことを仕返しや、八つ当たりとして、関係のないあなたに仕掛けていることが多いからです。
または意地悪に慣れた人たちは、相手の意地悪に気づかず助長させ、さらに被害者を拡大させていることもあるのです。

人の気持ちを知る、ということは非常に難しいのです。私が辛いことが、他人も辛いわけではない、私が好きなことが、他人も同じではないということです。
わかっているつもりがわかっていないことだらけなのです。
来談者中心療法のカールロジャースやバイスティックの7原則の中の『共感する』という本当の意味は、『そうですよね、辛いですよね』と相手の感情に付き合うことではなく、『あなたは今悲しいのですか?』と感情を確認することなんです。
そこまで専門性をトレーニングする必要はありませんが、せめて、ここで紹介した『共感のセリフ』と『協力的な行動』を意識してやってみてください。
意地悪に負けるな!!!

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知野吉和

知野吉和

介護人材育成アドバイザー・介護教員

新潟県加茂市出身・福祉系の専門学校卒業後、老人保健施設、特別養護老人ホーム、福祉用具貸与事業所、居宅介護支援事業所を経て、ヘルパー2級講座の講師を27歳から始める。その後現場の介護職員を対象とした研修講師を務め、10年ほど前から業務改善の支援を行う。組織改善において、あらためて思うことは、現場職員のスキルアップよりも、やるべきことは、組織のルールづくりです。管理者、リーダーの役割を明確にすることが内部統制、チームビルディング、生産性の向上につながります。感情労働であるからこそ、現場に振り回されないために、ルール作り、組織づくりの基本に立ち返ることをお勧めいたします。

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