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“寝たきりゼロ”はもう古い!寝たきりでも「重度化予防」こそを!③拘縮について(介護するのに困りますよね、、)

今回のテーマについて~拘縮・変形・筋緊張~

 拘縮(こうしゅく)という言葉は、高齢者医療や要介護高齢者支援に関わっている方ならば多くの方が聞いたことがあると思います。では、「(身体)変形」はどうでしょうか?むしろ拘縮よりも、「最近、身体変形が進んできたね、、」みたいに普通に使われることが多いかもしれませんね。では、「拘縮」と「(身体)変形」は、同じことなのでしょうか?別のことなのでしょうか?あるいは、「筋緊張」という言葉(専門用語)もあります。これら、「拘縮」「変形」「筋緊張」といった言葉についての理解は、本人様の現状を把握認識したり重度化予防ということを考えていくためにもとても大切なことなので、本稿で分かりやすく説明したいと思います。

「(身体)変形」について

 「(身体)変形」という言葉は専門用語ではありません。「様子を表す普通の言葉」ですので、医学的に厳密な定義はありません。ただ、おそらく間違いなく言えることは、
 ・普通とは異なる姿勢で、
 ・動かないでいる状態。

ということだと思います。「普通とは異なる姿勢」というのは、要するに「私たち健常者とは異なる不自然な姿勢」という解釈でよいと思います。前回にあげた私自身が模式的に真似ている「寝たきり老人の姿」は、全身的に変形しまくり状態ですね。また「動かないでいる状態」というのは、つまり可動性があるか?ないか?は関係ない、ということです。「不自然な姿勢のままで動かないでいる」ということであって、「健常者と同じような姿勢に直すことができる」のか「その姿勢のままで固まっていて全く姿勢が直せない」のかは、関係ない、ということです。
 直せるのか?固まったままで直せないのか?は、大きな違いですね。実際には、「健常者と同じに完全に直せる」←→「変形したまま全く動かせない」という両極端な状態は少なく、『少しは直せるけど、健常者と全く同じには直せない』ということが多いと思います。それならそれで、どこまで直せるのか?を把握することも大切ですね。「半年前も今も、同じような姿勢に変形しているけど、半年前に比べると直せる量が少なくなった」ということならば、『重度化が進んでしまった』ということです。
 何にしても「変形」(している)とは、一枚の写真で表現できるような動かない状態での静的な状態を表す言葉である、ということになります。

「拘縮」について

 拘縮という言葉は医学専門用語です。拘縮は「関節可動域(関節が動く角度範囲)が狭くなっている状態」なのですが、厳密な定義というのは見つけられませんでした。それでも多くの場合にされている説明は、「筋、腱、関節包(関節を覆っている膜)、皮膚などが縮み、そこにコラーゲン線維が絡みつくことにより動きが制限されること」といったものです。しかし立場によって「筋肉の緊張の結果として制限されている場合は拘縮には含めない(いや、それも含める)」とか「(関節内骨折など)関節構造体に構造上の問題がある場合は拘縮とは呼ばない(いや、それも拘縮)」とか、考え方の違いは論者によって異なります。それでも広く流布している「拘縮の原因分類」は以下のようなものになります。

種類: 1. 皮膚性拘縮
    皮膚が熱傷や挫滅から回復する際に、皮膚の伸張性/柔軟性が失われ、関節可動域が制限された状態。
   2. 結合組織性拘縮
    皮下組織や腱、腱膜の瘢痕が原因で、関節可動域が制限された状態。
   3. 筋性拘縮
    筋の萎縮・短縮が原因で関節可動域が制限された状態。
   4. 神経性拘縮
    痙性麻痺の痙縮(いつも筋が縮もうとしている麻痺の状態:脳卒中の患側上下肢が典型的)や痛みに対する反射性の筋の強張りが原因で関節可動域が制限された状態。

 ここまでの説明でお分かりかと思いますが、拘縮があるかどうか?は、例えば本人様の様子を写した写真を一枚見ただけでは分かりません。動く範囲がどうなっているか?が問題なのですから「動かしてみないと分からない」のです。その点、先の「変形」とは対照的ですね。一見、変形はあっても関節可動域は正常だから健常者と同じ変形のない姿勢になる事もできる、ということもあるわけです。
 その点で、介護職の皆さんにとっては変形というよりは拘縮の方が業務上の支障が大きいと言えます。上衣下衣を介助で更衣介助しようにも、肘関節や膝関節が深く曲がったままの拘縮状態では更衣介助が難しくなりますし、股関節が閉じたままで開かない(股関節内転拘縮)状態では、おむつ交換もままなりません。

筋緊張とは?

 最後に「筋緊張」です。筋緊張とは、姿勢のように写真で示すことはできませんし、拘縮のように動く“範囲”で判断できるものでもありません。筋肉は、意識的にも無意識のうちに反射的にも、収縮します。健常者が意識してどんなに力を抜いても、ごく弱く筋肉は収縮しています。(生理的筋緊張)神経疾患によっては、筋緊張が低下してしまうこともあります。(筋肉が、流れるお餅のような状態になる、という表現がされたりします)また、身体運動をしている時や身体を動かそうとしている時は、逆に筋緊張は高まって、瞬間的な筋収縮(≒身体運動)に備える状態となります。さらに何か原因があって常時筋緊張が亢進し過ぎている(筋肉が固くこわばる)状態のままだと、関節可動域は狭くなってしまいます(上記“神経性拘縮”の状態)し、身体変形の原因にもなります。また、常時筋緊張が亢進して全身的に身体がこわばっていると、身体を動かせなくなります。

要介護高齢者の「拘縮の悪化」原因と予防

 前回、「廃用性症候群」のお話をしました。廃用性症候群の症状の一つに「拘縮の発生、悪化」があげられます。身体を動かさないままでいればやがて関節も動かなくなる、と言えば、直感的に当たり前と思えますが、以下にもう少し詳しく考えてみます。
 上で拘縮の原因として、1. 皮膚性拘縮 2, 結合組織性拘縮 3, 筋性拘縮 4, 神経性拘縮 の、4つを上げました。要介護高齢者さんの身体に拘縮が発生~悪化していく時、この4つがどのような順番で起きてくるか?を並べると、次のようになります。
4. 神経性拘縮 ⇒ 3. 筋性拘縮 ⇒ 2. 結合組織性拘縮 ⇒ 1. 皮膚性拘縮
つまり、筋肉がこわばったままの状態が続き、やがて筋肉や筋腱の柔軟性が失われて短縮し、次に関節の回りの腱や皮下組織も柔軟性を失い、最後には皮膚の柔軟性も失われていく(関節表面の皮膚が薄いゴム膜を貼ったようなテカテカした皮膚になる)という順序で悪化していくことが一般的です。
 逆に言うと、4.神経性拘縮(筋肉の強張りで関節が動かない)の段階で筋緊張をほどいてあげれば関節拘縮は完全に無くなり関節可動域は正常に戻ります。4.+3.筋性拘縮(筋肉の短縮が起きている)の状態でも、筋緊張をほどけば拘縮状態はそれなりに改善もします。状況改善しなければ、拘縮もどんどん悪化していきます。身体活動量を増やせば廃用性症候群は防げる、という段階ではなくて既に寝たきりレベルの場合には、全身的な筋肉の強張りをほどいてあげなければ状況の改善~重度化予防は果たせませんし、逆に自律的には全く動けないような重度な障害状態であっても、全身的にリラックスした穏やかで柔らかい身体状態を維持できれば、拘縮の発生~悪化もかなりのレベルで防ぐことができます。(実際にはリラックスしてもらった状態で車椅子座位を含めてできるだけ様々な姿勢をとってもらう、といった支援が必要ではあります。)

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大渕哲也

大渕哲也

理学療法士

1985年理学療法士資格取得。1年間行政職員を経験の後、医療機関勤務。介護保険開始ともに社福介護施設に勤務し、その後民間介護事業所立ち上げ、福祉用具販売レンタル事業所勤務等経験。現在、(有)スマイルにて、法人内研修担当や現場のフォロー業務。その他、リハビリテーション工学協会・日本車椅子シーティング協会・テクノエイド協会の研修担当や民間介護セミナー事業社出講。(社)こうしゅくゼロ推進協会アドバイザー、(社)重度化予防ケア推進協会アンバサダー。

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