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専門家コラム

【生活の中の看護とは?総論】

はじめに 

異端児ナースの挑戦。私は高齢者施設で看護師をしています。はじめは病院から施設に就職した時はすごく悩みました。
何故なら?生活の中(施設)での看護は実際に学校では習っておらず、病院でやってきた看護は通用しなかったからです。また介護職員や他職種との壁もあり理解に苦しみました。
そもそも知らないこと経験していないことへの不安や葛藤、また誰もが自分と同じ価値観や感覚であるという期待があったことが間違いでした。
そこを切り離していくには私には知識と経験が必要でした。あんなに葛藤した毎日が今や年月が経ち生活の中での看護に対して楽しみややりがいを感じ使命すら持つようになりました(笑)
大好きな高齢者を支えるのに自分ひとり頑張っても無理で、人や物事のせいにしても事は上手くいくはずはなく、頭を整理しながら「何のために自分はこの仕事をしているのか?」常に問いかけ、まず自分がコツコツと学びや実践することが早道であることを途中で知りました。
全国に同じように悩まれている看護師や周りの介護医療に携わってる方
そこのコンフォートゾーンから抜け出しませんか?
そのために一つ一つ形をつけていきたいと思います。

時代の流れ~病院と在宅(施設)看護師の役割

我が国日本は1970年代、老人医療費が無料化になり病院に入院する方が増え、最後は誰もが病院で亡くなる時代となりました。しかしその後、高度医療も発達少子超高齢化が進み制度も変容し、最後は病院より在宅や施設で療養し看取る場所と移り変わっています。今まで私たち医療職も当たり前のように病院という環境で命を救って支えて見送っていましたが、今や在宅施設など外へフィールドが広がり、生活の中で疾患だけでなく幅広く知識や技術そして何よりも心(思い)がなければ支えていけない現実があることを感じています。
私たち働いている高齢者施設は病院とは違い、医師が常駐していません。定期的に往診に来てくださる先生(かかりつけ医)や医療機関と連携し、高齢者の暮らしを支えています。
施設の看護師は病気を治したりする病院とは違い、高齢者の生活の場の中で、高齢で慢性的ないくつもの病気を抱えながら生きている方の健康管理をし暮らしを支えるものとして存在します。また24時間暮らしを支えるためには介護医療職など多業種と様々な専門性を発揮、連携して実行しなければ成立できません。

施設看護師の責任と対応

医療機関では医師や医療専門職が同じ病院内にいて、何かあれば直ぐに相談ができ指示を受けることができます。施設には常勤で医師はおらず、看護師が医療的なことを総合的にみて、外部の医師に相談しないといけません。
日々の発熱、血圧が高い、嘔吐がある、腰が痛い、皮膚のトラブル…多種多様な症状。
医師が直ぐ来て診ていただける場合は少なく、緊急時は看護師がアセスメントし医師に報告対応。介護施設によっては夜勤は介護職が担っており、利用者の体調変化時は介護職より看護師がオンコールで電話を受け状態を聞いて指示をします。例えば夜間、転倒して骨折の疑いがあったり、腹痛や意識がおかしいなど救急搬送をする場合は介護職員より電話で報告をうけ、家から施設に向かい介護職員に情報を聞きとり救急車に乗り込み対応する。
私自身当初、命の問題がある利用者の時は配置医にでさえ、一緒に病院に来てほしいとお願いしたこともあり…今となってはなんという我儘で周りを振り回す看護師であったのかと反省するばかり。
また介護職からの報告がなければ対応がそもそもできません。現在は日々緊急時に備えた体制づくりや看取り体制の構築を行っているため、オンコールも負担なく過ごせていますが、以前はそれだけ責任の重さを感じ不安との戦いでした。

高齢者は慢性的な病気を沢山持っている

高齢者は様々な病気を持たれている方が多いです。加齢の変化や、高血圧、認知症、脳の疾患、心臓病、腎機能障害、白内障や緑内障などの眼の疾患、骨粗鬆症、骨折の既往、腎臓病…いろんな障害やADL(日常生活動作)の低下がある方、その方々によって相違があるものの複数の病気をかかえています。病院にいる頃は主となる病気を治療することが目的と役割でした。施設ではその方の持っている病気や障害、服用している薬、生活歴や社会的な背景…様々なことをトータル的に視野に入れての観察、分析や判断をしなければなりません。
例えば「腰が痛い」と言えば、神経痛や骨折等の整形外科的な問題か?腎炎や腎結石など腎臓などの問題か?判断によって受診する病院が違います。まずは既往歴を調べる。生活の中でのエピソード。いつからどんな時に腰痛が出現したのか?腰痛の他に症状はないのか?介護職員に情報を聞き、記録からも丁寧に見ていき、医師に相談し指示受け受診対応する。
一番大切なのは、利用者自身をみつめ、また生活を支える介護職員を見つめることが大切で、ちょっとした日々の変化、症状があったときの変化をキャッチし伝えられるように支援、それを自分の感覚で遮らずしっかり聞くことです。

介護職と看護師の壁を乗り越える

全国を講師業でまわっていましたら、この悩みは看護側介護側の双方に非常に多いことに気がつきます。看護師である私も、はじめはなぜ介護職に思うように事柄が伝わらないのかすごく悩みました。
病院では医療用語が共通言語でしたので、看護と介護では専門性が違うことを当初インプットしておらず、何でも通用するものだと勘違いしていたのです。教育課程、学んでいることが違う、役割が違うので同じことを求めるのがナンセンスなんですね。
介護職は主に生活支援と日常のケアに焦点を当てていますが、看護師は医療的なケアと健康管理に特化しています。お互いの役割を認識した上で「出来ない、悪い」ではなく「どうやったらよいか?」まず自分の視点をプラスに切り替えることが大切です。
相手のせいにして揉めたり嫌な気持ちになるのは、とてももったいない時間や感情に支配されることになります。
一度自分の職業の専門性…看護師とは?介護職とは?など深堀してみるのもよいでしょう。
まず一歩でも自分自身が変わる。何のためにこの仕事をしているのか?習っていないことは学び実践です。そしてチームとなりお互い何をするのか具体的に決め一つのことをやる。お互い協力し合いとても楽しく仕事がやりがいになる。それこそお互いの専門性が光ってくることだと感じます。

まとめ

現在も北九州市の社会福祉法人の特養で看護師をしています。21年間高齢者施設に努めながらそれぞれの我流のやり方に戸惑い施設看護や介護に形がないことに苦労しました。健康管理ってなに?介護って?一つ一つの実践を通し根拠を紐づけ現在は多職種でチームとなりやりがいをもって仕事が出来てきています。課題はまだまだ山積みですが、介護現場でこんなことあるよねという出来事を掘り下げながら一緒に形をつけていければと思います。次からは具体的に説明していきます。

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真鍋哲子

真鍋哲子

施設看護師 異端児ナース

福岡県北九州市出身。高齢者施設で看護師をしながら施設看護師や介護職の仕事に形をつけたいと講師業やイベント等奮闘中。日常の医療介護にまつわることをリアルにわかりやすく伝えます。 外科、整形外科、内科、精神科などを経験し、2002年より高齢者施設(特養等)の看護師として勤務。生活の場での看護・介護のやりがいを感じ介護現場でその人らしさを大切に多職種チームで命を最後まで見届ける支援に力を入れています。全国高齢者施設看護師会講師。地域では障がい者の落水洋介らと共に株式会社PLSで活躍中。

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