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ストレスを軽減するポジティブ感情の高め方

介護現場の様々なストレス

介護現場には様々なストレスがあります。
例を挙げると、肉体的にも精神的にも負担がかかりやすい、認知症のケア・対応が難しい、マンパワー不足で心の余裕がなくなる、職員間・多職種間の人間関係のストレス、職種間の考え方の対立、上司・同僚・部下との関係や派閥争い、問題や課題が多くネガティブな感情やコミュニケーションが生じやすい、など様々です。
また「令和2年度過労死等の労災補償状況」(厚生労働省ホームページ)によると、精神障害の多い業種ランキングで、医療・福祉業界が1位となっています。介護現場の様々なストレスが、職員のメンタル不調につながり、精神障害や退職につながるといっても過言ではないでしょう。
このような環境においてはネガティブな感情(不安・恐れ・怒りなど)が生じやすく、それがメンタル不調へと繋がっていきます。そのため、強いストレスがかかりやすい介護現場において、如何にしてポジティブ感情(愛・感謝・喜び・満足・興味・愉快・安らぎ・希望・誇りなど)を高めていくかがポイントとなってきます。

また、ポジティブ感情には以下のような働きがあることがわかっています。

・沈んだ気持ちを前向きに変えてくれる
・人間関係が良くなる
・睡眠の質があがる
・思考の領域を広げてくれる
・困難な状況から立ち直りやすくなる
・物事をやり遂げる力が高くなる

さらに、ポジティブ感情には「拡張・形成作用」(2001.バーバラ・フレドリクソン)というものがあり、様々な能力に変化をもたらします。

・知的能力・・・集中力が増し、これからのことが楽しみになる
・心理的能力・・・自分自身を受け入れ、人生に意義を見出す
・社会的能力・・・信頼に満ちた人間関係を築き、相手からの支えを感じる
・身体的能力・・・より健康になる

このように、強いストレス下においても、ポジティブ感情を高めることで、物事を前向きにとらえ、良い気分を保ち、希望をもちながら前に進むことができると考えられます。

では、どうすればポジティブ感情を増やすことができるのか、その実践方法について紹介しましょう。

ポジティブ感情を高めるコツ

①Three good things

ポジティブ心理学の創設者であるセリグマンが考案したエクササイズで、毎晩寝る前に、その日にあった「3つの良いこと」を書き出し、これを一週間続けるというものです。
実際に行われた研究では、うつ状態の人も、そうではない通常の被検者も幸福感が向上したという結果でした。Three good thingsは、良いことを3つ書く単純なワークですが、慣れてきたら「感謝したこと」を3つ書くことも効果的です。感謝するという感情は幸福感を高め、感情にポジティブな影響をもたらします。
ぜひ、3つ感謝したことを書く習慣も取り入れることをお勧めします。

②深呼吸を意識的に行う

 現代人はストレスによって呼吸が浅くなりがちだと言われています。そして、浅い呼吸はストレスのもとになり悪循環に陥りやすいため、意識的に深呼吸する機会を取り入れることが重要になります。時々、呼吸を意識し、緊張する場面やストレスが溜まってきたと感じたら、積極的に深呼吸をしてみましょう。それだけで、少しすっきりし、心が落ち着くこともあります。
 そこで、私がおすすめするのは「感謝の深呼吸」です。毎日、仕事をする前に、目を閉じながら深呼吸をします。最初は5分程度からでも構いません。その時に、一緒に働く職員、家族、友人など感謝していることをイメージします。月曜日は職員に感謝、火曜日は家族に感謝といった風に、日によって感謝する対象を変えてもよいでしょう。仕事をする前に、自分の心を感謝の感情にマインドセットすることで、ポジティブな気持ちで仕事に向かうことができます。

③運動をする

週3回、1回30分間の運動をすることには、抗うつ剤を服用するのと同じような効果があると言われています。
運動することで分泌されるセロトニンは、幸せホルモンともいわれ、ポジティブ感情を高めることにもつながります。ジョギングやウォーキング、ストレス発散できる自分の好きなスポーツでよいと思います。
また最近ではYouTubeで様々なエクササイズ系の動画が配信されていますので、自宅でも手軽に筋トレや有酸素運動ができます。少し疲れていて億劫なときでも、意識的に運動する機会をつくることによって、自然とストレス発散・ポジティブ感情の向上につながっていきます。
20分運動すれば、その後12時間は幸福度が上昇するといった研究結果もあります。ぜひ、運動する習慣をつくってポジティブ感情を高めていきましょう。

④ハピネスブースター

ハピネスブースターは、幸せの研究の第一人者であるタン・ベン・シャッハーが提唱した概念で、日本語で「幸福感増幅行動」と言われています。個人の幸福感の全体に好影響を与えるような意義のある楽しい行動のことで、仕事やプライベートで大変な時期が続いている時に効果的だと言われています。例えば、「忙しいけれどお風呂にはゆっくり入る」「晩酌の時好きな肴を1品は入れる」「家族との時間を大切にする」など、どのようなことでもよいです。自分なりのハピネスブースター(幸福感増幅行動)を生活にとり入れ、習慣化することをお勧めします。

習慣化するためのコツ

これまでポジティブ感情を高める方法をご紹介し、習慣化することを勧めてきました。
では、どうすれば習慣化することができるのでしょうか。意思の力には限界がありますよね。
ここでは、実際に効果があった習慣化するためのコツについてご紹介します。

・20秒ルール(心理学者ショーン・エイカー)

人は行動を起こすのに20秒以上かかるとおっくうなり、行動しにくくなると言われています。その傾向を利用し、促進したい行動は20秒かからなくてもできる状況にしておくこと、逆にやめたい行動はそれを始めるのに20秒以上かかるようにすると、習慣化が促進されます。
例えば、私も実際に取り入れているのが「朝起きたらすぐに原稿を作れるようにパソコンをセットしておく」「帰ってきたらすぐに筋トレできるようにダンベルを置いておく」などです。
こういった工夫は習慣化をつくる上でとても効果的ですので、ぜひ取り入れてみてください。

コミュニティの力を利用する

とはいえ、一人ではなかなか習慣化できないこともありますよね。そういうときはコミュニティの力を利用し、みんなでコミットして励まし合いながら取り組めば、習慣化につながりやすくなります。
LINEでグループをつくってもよいですし、今は習慣化するためのコミュニティをつくるアプリもあります。もちろん、集まる日時を設定し、みんなで取り組む時間をつくるのもよいでしょう。一人では自信がない方は、コミュニティの力を利用して習慣化を図ることをぜひ取り入れてみてください。

誰にでも前向きになれないときはある

これまで、ポジティブ感情の効果や高める方法についてご紹介しました。
一方で、すぐに前向きになれない、今非常に落ち込んでいてなかなか立ち直れない、といったこともあると思います。誰でもそのような時がありますよね・・・。
その際は、自分を責めず、自分への思いやりを大切に、少し心の充電をしてから、少しずつ前に進むことも大切です。時にはゆっくりやすんだり、誰かに話をきいてもらったり「感情をしっかり吐き出す」ことも大切です。
心が折れないよう、自分自身をいたわることも忘れないようにしてください。
そして、また前に進む勇気が湧いてきたとき、ご紹介した方法を実践し少しずつポジティブ感情を高めていけたら、また前向きに仕事に取組むことができ、きっと自分らしく充実した生活を送ることへとつながっていくでしょう。

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小山智彦

小山智彦

認定作業療法士 感謝の伝道師

日本作業療法士協会 認定作業療法士。介護現場の人間関係やチームワークで悩む日々の中、どん底の時に感じた深い感謝の想いと10000回の“ありがとう”に触れ、「人やチームの問題は感謝で解決できる!」と確信。 感謝を伝える「サンクスカード」の普及と独自の理念「サンクス道」を展開する。国際学会での発表、介護情報誌での執筆活動、研修や大学での講義など行い、講義では感動で涙する受講者が続出している。 ★「感謝の文化を作ることで『利用者様への感謝』が増え、ケアする人もされる人も幸せになる『寄り添いのイノベーション』が生まれます。私自身のこれまでの経験と想いを、コラムを通じて多くの方へ伝えていきたいです。

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