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“寝たきりゼロ”はもう古い!寝たきりでも「重度化予防」こそを!①ご挨拶と連載の趣旨

はじめまして

 はじめまして、理学療法士の大渕と申します。このたびkomachiケアカレッジさんにコラムを連載させていただけることになりました。新潟県内で6事業所を運営している民間介護会社社員という立場ですが、福祉用具や介護に関する様々の団体へのお手伝いや民間セミナー会社への出講等も続けております。理学療法士ではありますが、訓練方法というよりも「福祉用具の使い方」や「身体介護技術」を中心に情報発信しております。komachiケアカレッジさんコラムには、自身の中の一番新しい内容をお届けしていきたいと思っています。

ご存知ですか?「寝たきりゼロ作戦」(1989年)

 「寝たきり老人ゼロ作戦」という施策、ご存知ですか?お若い方の中には知らないよ!という方もいらっしゃるのではないでしょうか?「寝たきり老人ゼロ作戦」とは厚生省(現: 厚生労働省)が1989年に策定した「高齢者保健福祉推進10ヵ年戦略(ゴールドプラン)」の中の施策の1つで、1991年には啓蒙普及のために「寝たきりゼロへの10か条」というものが公布されました。1994年には、新ゴールドプラン策定に伴い名称も「新寝たきり老人ゼロ作戦」となりました。’91年の「寝たきりゼロへの10か条」は医療介護現場への具体的なアドバイスでしたが、’94の「新~」では、“関係部局及び市町村並びに関係団体等との連携を図り、地域の高齢者やその家族等に対して「寝たきりは予防できる」ことについて積極的な普及啓発活動等を行う”というもので、現場というよりは社会システムのあり方に主眼を置いたものとなっています。ちなみに、現場に向けた「10か条」は以下のようなものです。
第1条 脳卒中と骨折予防 寝たきりゼロへの第一歩
第2条 寝たきりは 寝かせきりから 作られる 過度の安静 逆効果
第3条 リハビリは 早期開始が 効果的 始めよう ベッドの上から訓練を
第4条 くらしの中での リハビリは 食事と排泄,着替えから
第5条 朝おきて 先ずは着替えて 身だしなみ 寝・食分けて 生活にメリとハリ
第6条 「手は出しすぎす 目は離さず」が介護の 基本 自立の気持ちを大切に
第7条 ベッドから 移ろう移そう 車椅子 行動広げる 機器の活用
第8条 手すりつけ 段差をなくし 住みやすく アイデア生かした 住まいの改善
第9条 家庭でも社会でも よろこび見つけ みんなで防ごう 閉じ込もり
第10条 進んで利用 機能訓練 デイ・サービス 寝たきりなくす 人の和 地城の輪

なぜ「寝たきりゼロ」はもう古い?その考え方

 「寝たきりゼロ10か条」なんて初めて見たよ!という方も、実際にご覧になってどう思いますか?「寝たきりにならないように心がけること」として、大変要領よく分かりやすくまとめられていると思います。特に2000年から始まった介護保険制度で「自立支援」が基本的理念として強調されたこともあり、「寝たきりゼロ10か条」の内容はもはや常識である、と言ってよいでしょう。もう常識になっているんだから寝たきりゼロ10か条は“古い?!”、いいえ、そういう意味ではありません。細かいところにコメントしたいことも多々ありますが、基本的に10か条の内容は今でも尊重するべきです。ではなぜ「古い」と言うのか?
 寝たきりゼロ10か条の内容が現場の常識になって、では実際に寝たきりの方は“ゼロ”になったでしょうか?そんなことはないですね、絶対数が増えたのか?減ったのか?は判然としない(そもそも“寝たきり”の厳格な定義はないので実数も出しようがない)のですが、やはり俗にいう寝たきりの方々は、病院・介護施設・在宅にいらっしゃいます。考えてみれば当たり前のことで、『人は必ず“死ぬ”』し、亡くなる前には多くの方が短時間なり長期間なりに“寝たきりになる”からです。そして、ある程度の期間以上を寝たきりで過ごしている方は、拘縮・褥瘡・るい痩(極端な痩せ)といった問題を抱え、さらに誤嚥性肺炎や尿路感染症といった疾患を繰り返しがちです。「寝たきりゼロ10か条」で必要以上に寝たきりになる方は減ったかもしれません。でもだからこそ、「やむを得ず“寝たきり”なった方でも穏やかな健康的な状態を保つこと」=『重度化予防』が、これからの新しい“常識”にならなければいけない、と強く思います。

褥瘡は“看護・介護の恥” では寝たきり者の「拘縮」は?

 私自身がまだ子供だった頃、1970年代のころには、高齢者に褥瘡ができて悪化すると『あと半年くらいかな?』なんて認識が一般的だったそうです。それが私が理学療法士として仕事をしだした頃、1980年代の後半頃には「褥瘡は看護(介護)の恥」と言われるようになりました。では今現在、「寝たきり老人の手足が曲がって拘縮している」状態を皆さんはどう感じますか?「寝たきりなんだから仕方ない、」と思いますでしょうか?虚弱~要介護高齢者さんであっても『重度化予防ケア』をきちんと体系化して行えば、“カチカチの拘縮状態の寝たきり”は予防できる!ということが、多くの現場で実践・実証され出しています。(エビデンス化はまだですが)私としては、寝たきりになれば拘縮は仕方ない、ではなく『拘縮は看護・介護の恥』という意識が常識になっている、早くそんな社会・業界になってほしい、と心から思います。

本連載コラムの内容

 「寝たきりでも拘縮や褥瘡がない?!」もしかしたらにわかには信じられない方もいらっしゃるかもしれません。でも本当に実現できるとしたら?!看護師さんにしろ介護士さんにしろセラピストさんにしろ、『自らの職業的役割と責任=専門職としてのアイデンティティ』に大きな変化を迫るものではないでしょうか?私自身はそういう心づもりでもって、現場への日々の支援業務や情報発信を続けています。
 今回ここまで書いてきたような歴史的経緯や自分自身の意識を踏まえ、本コラムでは「褥瘡・拘縮などの“身体障害重度化”の機序(重度化の仕組み)」「重度化を予防する個々の技術と全体としての体系化」「重度化予防のための各職種の役割」「重度化予防ケア普及の阻害因子(なぜ普及しないのか?)」といったことを、順々に分かりやすくまとめていきたいと思います。よろしく言お願いします!

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大渕哲也

大渕哲也

理学療法士

1985年理学療法士資格取得。1年間行政職員を経験の後、医療機関勤務。介護保険開始ともに社福介護施設に勤務し、その後民間介護事業所立ち上げ、福祉用具販売レンタル事業所勤務等経験。現在、(有)スマイルにて、法人内研修担当や現場のフォロー業務。その他、リハビリテーション工学協会・日本車椅子シーティング協会・テクノエイド協会の研修担当や民間介護セミナー事業社出講。(社)こうしゅくゼロ推進協会アドバイザー、(社)重度化予防ケア推進協会アンバサダー。

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