介護の現場に「少数精鋭」はありえない
介護の質を上げる、つまり利用者に良いサービスを提供するためには、まず一定以上の職員数が必要です。
介護の現場において、「少数精鋭」はありえない、という話です。
例えば、ユニットケアの現場では、かなり多くの時間、ワンオペレーションで回っています。いや、むしろ、回している、と言った方がよいかもしれません。
もちろん、スタッフが複数名いる時間帯もあります。ところが、そんな時には、ここぞとばかりに会議を入れたり、レクリエーションやイベントなどを実施したり、ずっと先送りにしていた業務を差し込んだり…。
ですから、結局のところ、本来の通常業務に、本来の定員人数があたれることは少なく、常にほぼワンオペレーション状態で現場を回している、というのが現状なのです。
そもそもユニットケアが制度化された表向きの目的のひとつとして「一人ひとりとじっくり向き合い、きめ細やかなケアを実施するため」とされています。
ところが、残念なことに、現場で、積極的に利用者と向き合うシーンを見ることは少ないです。(もちろん、少数とはいえ、積極的に一人ひとりと向き合い、きめ細やかなケアをされている介護職員さんもちゃんといます!!)
介護現場あるあるですが、そのユニットに自分一人しかいない時間帯に、一人の利用者の対応に追われている途中で、他のナースコールが次々に鳴ったり、遠くで物音が聞こえたり…、と、身体が3つくらいあったらいいのにと本気で思うような場面がたくさんあります。
休憩時間なのに、ユニットで見守りという業務をしながら、お弁当を食べている職員さんを見たこともあります。
どんなに、個々のスキルが上がったとしても、さすがに一人で回すのは難しい、という現場の声をよく聞きます。
でも、実例としては、スキルの高い介護職員さんが担当する日は、ワンオペレーションでもうまく回している、というケースもあるのです。
なので、そんな職員さんばかりが揃っていれば、少数精鋭もありかもしれません。
ですが、実際には、そんなアベンジャーズのような精鋭集団が結成されることはないので、やはり、介護現場において、「少数精鋭」はありえない、と言わざるを得ません。
2つの「量」を満たす
さて、質と量の話ですが、質を上げるためには、まず量が必要です。
ぜひ、この考え方を覚えておいていただきたい。
介護施設が介護施設としての健全な運営をするためには、2つの「量」を満たすことが必要です。
まず、1つ目の「量」は、職員の数を確保すること。特に、ショートや、入居系の夜勤がある施設では、夜勤ができる人を確保すること。この「量」の確保が必須です。
よくあるケースで、苦肉の策として、「日勤しかできないけど、まーいいか」としかたなく妥協の採用を続けていると、補助的な勤務のパート職員ばかりが日中の利用者の状況を把握して、常勤のリーダー的な職員は夜勤ばかりになり、パート職員と常勤職員の役割・立場が逆転したような形になってしまいます。常勤職員が、パート職員の指示をもらったり、気を使ったりしながら、現場を回さなければならない、いびつな状況になるのです。
パート職員が日中の重要な役割を任せられているにもかかわらず、「私は施設長に呼ばれてきただけだから…」と重要な判断の場には参加せず、しかも新しいチャレンジへの興味もなく、決まったことに対しても「私、パートだから…」と協力を得られない、といったパターンをたくさん見てきました。
一方で、現場の職員の現状の伝え方にも問題があると感じています。たとえば、「なんとか夜勤は私たちがやるので、パートでいいので誰でもいいので採用してください」という発言です。これが悪循環の始まりになります。
もしも上司に人材不足の改善を求める時には「夜勤ができる人を採用してください!」としっかり言ってください。
リーダーこそ、夜勤は控えめにして日中のケアを守る、そして新人育成もパート職員に任せない、ということが大事です。
次に、2つ目の「量」は、介助経験の回数を増やすことです。ケアの質=スキルを上げるためには、まずはともかく回数をこなす必要があります。
私の調査では、「慣れるのに必要な経験回数は1,200回」ということがわかっています。
これはトータルの回数ではありません。オムツ交換1,200回、車いす移乗1,200回、口腔ケア1,200回…、といったように、それぞれ1,200回の経験が必要です。
以前、従来型の特養(4人部屋)で行った調査では、オムツ交換の経験が1,200回に達するのに、3か月かかっていました。
つまり、新人のひとり立ちには最低でも3か月以上かかるということです。これは、それぞれの介助ケアの経験が同じくらいの速さで進んだ場合ですので、通常はもっと長い期間がかかります。
そうして、ひとり立ちできて、今度はそこからがようやく「スキルアップ」です。トレーニングや経験の数によって、質(精度)が上がっていくのです。
コップが水で満たされるように、経験の量(数)を積み重ねていくことで、力が発揮される土台ができます。コップから溢れた水が「質」=良いサービスというイメージです。満たされた水が溢れ出すように、自然と質の高いサービスが提供できるようになります。
まとめ
最後に、もう一度。量(数)の後に、質がある。
介護の質を上げる、つまり利用者に良いサービスを提供するためには、まず一定以上の職員数が必要です。介護の現場において、「少数精鋭」はありえません。
そして、一人ひとりの経験の積み重ねが、一定の基準を超えた時、自然と質の高いサービスが提供できるようになるのです。
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