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介護ココロのケア

大切な人へ遺す言葉 ~Role letterのススメ~

ケアカレッジ「介護のココロのケア」担当、グリーフケアアドバイザーのトサです。

突然ですが、私たちの未来に『絶対』と言えるものがあるとしたら、それは何だと思いますか?

それは【死ぬ】ということ。

私たちは誰しもがこの地球上に生を受けて誕生しますが、誰一人として「死」を避けることが出来ず、命の長さはそれぞれ違いがあるものですが、全員等しく「命の長さは有限」です。
けれど健康で順調な時は「死」というものの存在を忘れてしまいがちです。

※死に関しては様々な宗教の教えや科学的研究はあるものの「体験したことがない」(体験したとしても次の命になるときには忘れている)ため、どれが正しいのかは分かりません。

コロナが流行りだして間もない頃、感染症による「予期せぬ死」のニュースを耳にすることがありました。
ニュースを見て思ったのが病院に隔離されてしまいそのままお別れをすることがあるという事実でした。
意識がないという状態もあるでしょうし、容態の急変などもあるかもしれませんが、遺された人たちにとって、大切な人を失う痛みや悲しみというのはとても大きいものです。

愛する命の死というのは、命の時間の宣告を受けてから「できることを精いっぱいした」としても後悔を持つと言われています。

ましてや、突然の別れであれば、その後悔はどれくらい大きなものになるのでしょう…

グリーフ(喪失ケア)についてはまた別の機会に書かせていただくこととして、今日は「Role Letter」についてご紹介したいと思います。

Role Letter(役割を持つ手紙)とは?

私がグリーフケアについて学んだ一番最初にしたのが、ロールレターを書くワークでした。

ロールレターワークとは『大事な方へ』宛てた【遺書】を書くというもの。

【Role Letter】というのは遺書でもありますが、大切な人に伝えておきたい言葉を残す手紙。
Roleとは役割という意味。
伝えておきたい事、残していきたい言葉を書いて届けるという「役割を持つ手紙」です。

ワークは時間にして10分を使い、自分の大事な人を想像して、自分が亡くなった後で伝えておきたい事を書く作業。
(私は実家の両親と妹たちを「家族」とひとくくりにして伝えたい事を書きました)

いざ紙を前にして「伝えたい事」を書こうと思うと、さまざまな感情があふれて揺れるのを体験しました。
10分のワークでしたが、会場のあちこちからすすり泣く声や嗚咽が聞こえてきて、講師の先生が「泣かせるつもりじゃないから、5分に短縮!!」と止めに入るくらい素敵なワークでした。(表現が下手で素敵さが伝わらずすみません…)

「私の家族へ」と題して宛てた遺書には、次のようなことを書きました。

●一緒に暮らしている「大切な家族」である愛猫・愛犬を託していくこと
●愛猫、愛犬の健康状態のこと(お願いしたいこと)
●私の遺していくものは全て自由に処分してほしいこと(捨てても使ってもらってもいい)
●わずかですが「遺すお金」で愛犬・愛猫をお世話してほしい
●いずれ愛病・愛犬と一緒に眠りたいので、死んだらお墓に入れず樹木葬にして欲しい(ペットたちも個別火葬して一緒に私の眠る場所に埋葬して欲しい)
●私の事を愛してくれてありがとう。出会えてよかった。またね。

もしこれが、最後に遺していける手紙だとして「何を伝えたいのか?」を考えた時に出てきたのは、自分が大事にしているペットたちの事と死後に自分が願っているわずかなこと、

そして「ありがとう」「またね」という言葉でした。

Role Letterはレポート用紙でも便箋でもOKなのですが、書くときには次のポイントがあります。

– – – –
・記載日を記入すること
・気持ちが変わったら書き換えてOK
・誰に宛てて書いたのかを分かるようにしておく(複数人にまとめて…というのもOK)
– – – –

日付を書いておくことで、後で自分がRole Letterを見返した時に「昨年の私はこう思っていたんだ…」と自分がその時に遺したい思いや言葉が分かりますし、自分が今世の命を全うした後で複数のRole Letterを見つけてもらったとしても、日付を頼りにして遺族が先に逝った愛する人の願いを叶えたり受け取る時の助けになります。

人の気持ちというのは変化するものです。
だからこそ、書きたくなったときに書き換えてOK!と、気軽に手紙 (ロールレター)を残すことがいいのかもしれません。

私は自分の死後に「頼んでいきたい事」「お願い事」を書きました。
ペットの命のお世話と、私が死んだ後にどう埋葬して欲しいか。

先ほど少し、残された遺族は「後悔」を抱えるということを書きました。
どんなに手を尽くして心を砕いて愛を伝え続けても、それでも「足りなかった」と罪悪感を感じるのが大切な人の死です。

遺された後で「ねぇ、これをお願いしたいんだけど」という願いを叶えることが出来るのは、感じてしまった罪悪感を小さくするのにも役立つと私は思っています。

その人が居なくなった後で、その人の願いを叶えるという愛の行動が、残された人の希望になったり「してあげられた」と心に温かい火を灯せるならば、ロールレターにお願いしたいことを書くことは、思いやりのある愛のメッセージなのかもしれませんね。

ロールレターを実際に書いてみて、私が「今」死ぬとして心残りなのは、愛するペットたちの事でした。
それ以外に思考を巡らせてみましたが、私が伝えたかったことは

・ペットたち2匹のこと
・そのためにお金を使ってほしいこと
・ペットたちも後から私と共に埋葬して欲しいこと
・感謝

だけなんだというのがクッキリ分かりました。

もしもペットたちを見送ってから私が逝くのであれば、2匹を託す部分とそれに付随するお金の話やペットたちの火葬の話はなくなり、私自身を先に眠っているペットたちと一緒に眠らせて欲しいとお願いすることと、わずかながら残していくお金の情報などを書くだけで

ありがとう!
またね!!

という感謝の言葉と、いつかの再会の約束だけが残るのだと分かりました。

普段、死を考えるなんてことはしないからこそ、改めて『死』を前にして考えると、本当に自分が大切に思っていることや、何を一番大事に思っているのかがクッキリ分かるという体験をしました。

Role Letterを書いて分かったこと

私たちは「悩むことが大好き」で、目の前のありとあらゆることを”わざわざ問題にして”悩んだり苦しんだりします。

それは「生きていることを満喫するために問題や課題をクリアする」という人生のアトラクションを楽しんでいる…ということなのだけれど、健康で順調な時は「権力」だったり「物質的な富」を得る事に自分の力を注ぎ、より多く・より上を目指します。

けれど、死というものの前には何も持って行けず、誰かと一緒に逝けるのでもなく、ただ一人で何もかもを残し、ふぅっと最後の一呼吸を終えると今世に幕を下ろして旅立つんですよね。

ロールレター(残したい言葉たち・遺書)を書くというワークを体験して分かったことは「残していく愛する存在のためのお願い事」と「本当にありがとう」という暖かい感謝の気持ち、「またね」という祈りと未来への願いしかないことが分かりました。

死んでいく、という状況の時は恰好つけることなく「純粋」に届けたい言葉が湧き上がります。

遺書を「誰かに宛てる」と想定したワークをするのは、ちょっとしんみりしますが、手紙の中で伝えたい言葉を”そいでそいで”考えると「愛」だという事に行きつくことを体験できると思います。

書きながら涙も出ますが、書きあげると心が優しく暖かい気持ちで満たされ、「ありがとう」を書いた後で自然と微笑めることにもびっくりしましたが、とにかく素敵なワークです!!

あくまで「ワーク」なので形式ばったことは必要ありませんので、ご興味のある方はぜひやってみてくださいね!

私は大きな会場でこのワークを体験しましたが、会場ではすすり泣く声・嗚咽が漏れていました。

中には大切な人を亡くしたばかりの人や、大切な人を助けられなかったことを悔やんでいる人たちも沢山いたと思います。
助けたいという大きな願いを持って医師や介護の道に進んでも助けられない命があるのを目にすることや、突然の事故や事件に巻き込まれてお別れすら言えずに離れてしまった場合の心残りや悲しみは想像を絶するものがあります。

だからこそ、ロールレターに「お願いしたいこと」や「伝えたい言葉」「愛や感謝」が書かれていたら、遺された人の救いになります。

大切な人の望みを叶えることは残された人にとって暖かく優しい仕事です。
それを叶えるときに故人を近くに感じ、幸せを受取れます。

大好きな人が自分に愛を持ってくれていたと知る事で、遺された人の胸の中に暖かい愛が溢れ、大切な人を心の中で強く抱きしめることができます。

自分にとって純粋に大切なもの・大切な気持ちを見つめることができるだけでなく、遺された人の救いにもなるなんて、とっても素敵な手紙ですよね!!

この「大事な方へ」のロールレターワークには続きもあるのですが、それを省いたこのワークだけでもすごく気持ちがスッキリしますし「生きていること」って素晴らしい!と感じられます。
ぜひ、大切な人にのこしたい言葉を「遺書」として書いてみる時間を作ってみるのをオススメします!

これは「ワーク」なので、別に明日死ぬのではないので (命の長さは分からないので100%死なないと言い切れませんが…)ワークをして湧きあがった「愛」や「感謝」を言葉にしたり態度にして相手に届けることが出来るのも、生きている事の価値だと思うんです。

あなたは誰に自分の言葉と笑顔で「愛」と「感謝」を伝えたいでしょうか?
生きているからこそできる「笑顔」と「ハグ」を届けてみませんか?

愛や感謝は何度伝えてもいいんですものね♡

大好きな人に大好きと言える事は、とても幸せなこと。
大事な人への Role letter をあなたは誰に書きたいと思いますか?

※追伸
私は最近、Role Letter を更新しました。
やっぱり涙が出ましたが、書き終わった後はとても優しい、とっても暖かい気持ちになれました!!

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トサ

トサ

グリーフケア・アドバイザー

株式会社ドットコム・マーケティング在籍。 2021年、グリーフケア・アドバイザー1級取得。 2022年、動物医療グリーフケア・アドバンス講座終了、23年10月よりペットライフグリーフケアアドバイザー認定に向けてステップアップ予定。 人生で最もつらく答えのない苦しみに対峙するのが喪失体験です。『哀しむことは愛すること』という言葉を胸に、愛で見守り・愛で受け止め・愛で支えるグリーフケアを目指しています。 グリーフケア分野以外のお悩み相談・カウンセリングでは、自分に優しさを向けて思いやり、自己受容する生き方のサポートを得意とする。

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