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専門家コラム

チームで働くということ

チームとは何か

 「チーム」とは、共通の目的や目標を達成するために、互いに協力し合いながら働く人々の集まりのことを指します。ただ一緒にいるだけの「グループ」とは異なり、チームには明確な目的が存在し、メンバー同士の相互作用や役割分担が不可欠です。たとえば、同じ職場にいるというだけではチームとは言えません。互いの強みを活かし、補い合いながら成果を生み出していく関係性こそがチームの本質と言えます。チームは単なる集合体ではなく、「共に目指すもの」があります。そのため、チームを育てるには、目的の共有と信頼関係の構築が重要となります。

良いチームの特徴

それでは、良いチームとはどのようなチームでしょうか。そのポイントを以下の通り整理します。

①クリアな目的と目標

まず重要なのは、チーム全体が共通の目的や目標をしっかりと理解していることです。なぜこのチームが存在しているのか、何を達成したいのかが明確であれば、メンバーの行動や判断に一貫性が生まれ、同じベクトルをもって進んでいくことができます。

②役割と責任

次に、それぞれの役割と責任がはっきりしていることが大切です。誰がどのような役割を担い、どこまでの責任を持つのかが明確であることで、チームは効率的に動きます。また、自分の役割に誇りと責任を持てるようになると、メンバーのモチベーションも高まります。  
一方で、自分の役割だけに固執してしまうのは、かえってチームのバランスを悪くすることもあります。他職種や他部署が困っているとき、自分の役割を超えて、お互いに助け合う・支えあう柔軟性も時には大切になっていきます。

③開かれたコミュニケーション

良いチームでは、メンバー同士のコミュニケーションが活発で、風通しが良いのが特徴です。意見の違いも大切にされ、安心して本音を話せる環境(心理的安全性が高い環境)が、創造性やチームの問題解決能力を引き出すことに繋がっていきます。

④相互尊重と感謝

互いを人として尊重し、感謝の気持ちを伝え合うことが、信頼関係を築く土台となります。小さな声かけや「ありがとう」の言葉が、チームの空気を大きく変えていきます。

⑤目標に向けて協力・助け合い

そして最後に、チームの真価は「一緒に頑張れるかどうか」にかかっています。困っている仲間がいれば自然に手を差し伸べる。そんな支え合いの姿勢が、チーム内の信頼関係を強化し、強い絆でつながれたチームへと成長させるのです。

悪いチームの特徴

 では、悪いチームとはどのようなチームでしょうか。その特徴ですが「良いチーム」の条件を真逆にすることで、そのポイントが見えてきます。

①目的や目標があいまい

最も大きな問題は、チームの目的や目標があいまいであることです。「何のために自分たちは動いているのか」が共有されていないと、メンバーはそれぞれ勝手な方向に進み、チームとしての力を発揮できません。また、目標がはっきりしていないと達成感ややりがいも得られず、モチベーションの低下にもつながっていきます。

②役割が不明確・無責任な言動や行動

誰が何を担当するのかがはっきりしていないチームでは、仕事の重複や抜けが起きやすくなります。さらに、責任の所在が不明瞭になることで、問題が起きたときに「自分の仕事ではない」と責任を回避する人が現れたり、これは○○さんの責任だと他責的になる人が現れたりします。その結果、チームの信頼関係が崩れていきます。こういった自分の役割を自覚しない無責任な言動は、チームに悪影響を及ぼします。

③陰口や悪口。情報が共有されない。

チーム内で陰口や悪口が飛び交うと、人間関係の雰囲気が悪くなり、互いを信頼できなくなります。また、必要な情報が共有されずに個人が抱え込んでしまうと、業務の効率が下がるだけでなく、ミスやトラブルの原因にもなります。情報が閉ざされ、メンバー間の対話が乏しいチームは、成長のチャンスを失ってしまいます。

④あいさつしない。感謝しない。自分勝手。

また、基本的なマナーが欠けていると、チームの空気はどんどん悪くなります。あいさつをしない、感謝を伝えない、自分の都合ばかりを優先する態度は、周囲の士気を下げ、チームの一体感を失わせます。あいさつや感謝の言葉のような「小さな行動」にこそ、その人の人間性やチームへの姿勢があらわれるのです。

⑤協力しない。指示まち。声を掛け合わない。

助け合いや声かけがなく、ただ指示を待つだけの状態では、チームは停滞します。積極的に動こうとしないメンバーが多いと、責任の一極集中が起こり、リーダーや一部の人に過度な負担がかかります。互いに声を掛け合い、必要な時に協力し合える関係がなければ、どんなに優秀な人材が集まっていても、チームは力を発揮できません。

たった一人の影響力

 このような悪い特徴をもったメンバーがチームに一人いるだけでも、チーム全体が混乱します。たとえば介護現場では、「自分の担当じゃない」と言って動かない職員がいると、他の職員がその分までカバーせざるを得なくなり、不満や疲労が蓄積します。加えて、陰口や情報の不共有があると、不信感が広がり、協力しあえる関係性が失われていきます。現場では利用者の命や安心がかかっており、ちょっとした連携ミスが大きな事故につながることもあります。チームリーダーは、たった一人の姿勢や言動が、チーム全体のa雰囲気や働き方に大きな影響を与えるということを知り、チーム全体の状態やメンバー一人ひとりの自覚と行動をよく観察していく必要があるでしょう。

チームで働くということ=みんなでいきるということ

 完璧な人なんて、どこにもいません。会話が少し苦手だったり、心が少し弱かったり、不器用だったり・・・誰もが何かしらの「足りなさ」や「苦手」を抱えて働いています。けれど、だからこそ、チームの存在が大切になるのです。誰かがつまずいたとき、そっと支える人がいたり、言葉にできない思いを表情や態度で感じ取ってくれる人がいたり・・・。たとえ意見が違っても、対話を通じて理解し合おうとする関係があれば、それが「働く場所」でありながら、自分らしく「生きる場所」にもなります。
 お母さんのように話を聞いてくれる職員がいたり、心の弱さに寄り添ってくれる先輩がいたり、75歳でも笑顔でバリバリ働く仲間から元気をもらったり・・・。そんな多様なつながりのなかで、誰もが“自分らしく”いられる空気があること。それが、良いチームの何よりの強さだと思います。
 チームで働くということは、単に「協力する」という以上の意味を持っています。それは、「みんなでいきる」ということ。支え合い、補い合い、感謝し合いながら、日々を共に歩むということ。その結果、チームはただの“働く集団”から“生きる共同体”へと育っていくのです。

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小山智彦

小山智彦

認定作業療法士

「感謝には人やチームの課題を解決する力がある」と考え、感謝の気持ちを伝える「サンクスカード」の普及に取り組んでいる。国際学会での発表や執筆活動、研修や大学での講義などを通じて感謝の文化づくりと幸せな職場づくりを推進し、「ケアする人もされる人も幸せになる」ことを目指している。 日本作業療法士協会 認定作業療法士/日本実務能力開発協会 認定コーチ/一般社団法人Well-Being DESIGN 認定Well-Being Dialogue Cardファシリテーター/ポジティブ心理学実践インストラクター

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