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嘘や陰口がチームを崩壊させる

嘘や陰口がチームを崩壊させる

以前コラムで取り上げた「チームを破壊するコミュニティクラッシャー」の記事のアクセス数が非常に多かったので、クラッシャーの行動の中でもチームへの影響が大きい「嘘・陰口」について取り上げたいと思います。

「チームを破壊するコミュニティクラッシャー」の記事はこちら
https://care-college.jp/expert-column/community/

誰でも嘘や陰口を言う人に出会ったことがありますよね。また、自分自身が陰口を言ってしまった、嘘をついてしまった、ということはあるのではないでしょうか。人間はだれしも弱い一面をもっています。なので、嘘や陰口はなくなることはないかもしれませんが、チーム内で常に嘘や陰口を言う人がいたとしたら、チームの機能を大きく低下させてしまいます。

①「ばれにくい嘘」がチームを混乱させる
嘘をつく職員がいると、チーム内に混乱を生み出し、情報共有の信憑性を失い、人間関係の対立にもつながっていきます。その嘘が、誰にでもばれてしまうわかりやすい嘘だったとしたら、チームが混乱する前に、その職員を問い詰めれば良いだけの話です。ところが、非常に厄介なことに、チームを混乱に陥れる職員は、事実に対し少し間違ったニュアンスに変えたり、過大に表現したり逆に過小表現したりするような「ばれにくい嘘」をつくことがあります。
 例えば、Aさんが「この前のイベント、Bさんが風邪をひいて休んで大変だったけど、みんなで協力して成功に終わってよかったね」とCさんに話したとします。その後、CさんはBさんにこう言います。「この前さ、Aさんがイベント大成功だったって言っていたんだけど。Bさんがいなくてやり易かった、みたいなこと言っていたんだよ。ひどいよね・・。」とニュアンスを変えて、Bさんに伝えてしまいます。それを聞いたBさんは、Aさんに対しネガティブな感情をもつようになり、その気持ちが態度で表れてしまうので、AさんとBさんの関係はギクシャクしてしまいます。一方でAさんは、何でBさんがそんな態度になったのか心当たりがないので、混乱してしまいます。Cさんのような人が、他の場面でも同じように嘘をつくことで、次第に嘘が真実化され、さらなる混乱や信頼関係の崩壊につながっていきます。

②陰口がチームの「心理的安全性」を低くする
心理的安全性とは、チーム内で意見を自由に述べたり、質問をしたり、失敗を恐れずに行動できる状態を指します。この概念は、アメリカの心理学者エイミー・エドモンドソン(Amy Edmondson)が提唱したもので、心理的安全性が高い環境では、メンバーが互いにサポートし合い、学び合うことができるため、組織やチームのパフォーマンスが向上することが示されています。
陰口は、チームの心理的安全性を著しく低下させ、結果的にチームを崩壊させる要因となる可能性があります。その理由にはこのようなことが考えられます。

●信頼の喪失
陰口は、対象となる人がその場にいない状況で他人を批判する行為です。これにより、陰口を言われた人はもちろん、周りで聞いていた職員も「自分も陰で何か言われているかもしれない」と感じるようになります。この気持ちが心理的安全性を著しく低下させます。このような状況が続くと、職員間の信頼関係が崩れ、コミュニケーションが減少します。そして、自分の意見やアイデアを自由に表現することをためらうようになっていきます。さらに、ミスや失敗を隠そうとする職員もでてくるようになり、「嘘」をいう職員を生み出すことにもつながります。

●チームの分裂
 陰口は、チーム内に不和や対立を生み出す原因になります。例えば、陰口が原因で派閥が形成されると、チームが一つの目標に向かって協力することが難しくなります。職員間の対立が深刻化すると、チーム全体のパフォーマンスが低下し、最悪の場合、チームそのものが分裂する可能性もあります。

●ストレスと士気の低下
陰口が広がる職場では、メンバーは常に他の職員の目や評価を気にしなければならなくなり、ストレスが増加します。これが続くと、チームの士気が低下し、仕事に対する意欲やパフォーマンスも低下し、長期的には離職率が高くなってしまう可能性があります。

陰口は、チーム内の信頼関係、良質なコミュニケーション、心理的安全性を大きく損なう行為です。これが積み重なると、チーム全体の士気やパフォーマンスが低下し、最悪の場合、チームの分裂や崩壊に繋がる可能性があります。また、陰口の対象は、チーム内のリーダーなど「重要な人物」を対象とすることが多く、周囲は次第にリーダーに対する不信感を抱くようになってしまい、リーダーへの信頼が失われる可能性があります。リーダーが信頼されなくなると、チーム全体の方向性や目標達成に対するモチベーション低下にもつながってしまいます。

なぜ嘘や陰口を言うのか

チーム内で嘘や陰口が生まれる背景には、いくつかの心理的な要因があります。以下に、主要な心理的側面をいくつか説明します。

●自己防衛と不安
嘘や陰口を言う人は、自己防衛のためにそのような行動を取ります。特に、自分の立場が脅かされていると感じた場合や、ミスや失敗を隠したい場合に、嘘をついたり他人を批判したりすることで、自分を守ろうとします。これは、失敗や批判に対する恐怖から来るものであり、結果的に自分を守るための行動となります。

●自己肯定感の低さ
 自己肯定感が低い人は、自分の価値を感じるために他人を貶める傾向があります。他人の失敗や欠点を強調することで、自分が優位に立っていると感じ、自己評価を高めようとします。このような行動は、陰口や他人を悪く言うことで「自分を守る」一種の自己防衛メカニズムです。

●嫉妬や競争心
チーム内での競争が激しい場合、嫉妬心や競争心が嘘や陰口の原因になることがあります。特に、チーム内の誰かの成功や優れているところが自分に対する脅威と感じられると、その人を陥れるために陰口を言ったり、嘘をついてその人の評判を落とそうとすることがあります。

嘘や陰口を減らすにはどうすればよいか

まずは、職場における行動指針を明確にすることが大切です。チーム内でその行動指針をきちんと共有し、嘘や陰口を言うという行動が「よくない」「問題だ」と皆が認知できるような文化を作っていくことが重要です。その際、なぜ嘘や陰口がよくないのか、なぜチームを崩壊させてしまうのか、その理由をしっかり説明する必要があります。

そして、大切なのは、チームリーダーが嘘や陰口を許さない姿勢を明確に示す必要があります。チームマネジメントにおいて大切なことは、チームの行動指針や期待される価値観を明確にし、これに違反する行動には適切なフィードバックを行うことです。そして、重要なのは、リーダーがしっかりとした対応をとり、チームメンバーが「リーダーは本気なんだ…」と感じるくらい毅然とした態度を示すことです。また、リーダー自身が模範を示し、オープンで誠実なコミュニケーションを実践することも重要です。

ただ、これらの対応だけでは改善しないケースもあるでしょう。その場合、個人の力では解決することが困難ですので、問題となる発言や態度、行動が就業規則やハラスメント規定に違反していないか、客観的な情報をできるだけ集めていき、役職者など上の立場の人が、然るべき対応をとることが重要です。

陰口より陰感謝

行き過ぎた嘘や陰口は、チームを崩壊させます。それとは反対に、私がおすすめするのは「陰感謝」です。陰感謝は、相手が直接聞いていない場面でその人への感謝の気持ちを他の誰かに伝える行為です。陰口の反対で、陰感謝はチームに非常に良い影響を与えることがあります。例えば、夜勤明けにリーダーがAさんに「昨夜、利用者さんが突然具合が悪くなったけど、夜勤のBさんが本当に冷静に対応してくれて助かったんだ。彼女の対応がなかったら、もっと大変なことになっていたかもしれない。Bさんに『ありがとう』って思ったよ。」話したとします。あとで、Aさんはリーダーがそのように話していたことをBさんに伝えます。Bさんは、リーダーの感謝の気持ちを受け取り、努力が評価されていることを嬉しく感じ、次の夜勤にも自信を持って臨むことができるのです。

嘘や陰口は、チームの信頼関係を崩壊させます。真摯に仕事に向き合い、表でも陰でも、感謝し合えるチームを創っていきたいですね。こちらの記事もぜひご覧ください↓↓
感謝の心が良いチームを創る
https://care-college.jp/expert-column/heart-of-gratitude/”

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小山智彦

小山智彦

認定作業療法士 感謝の伝道師

日本作業療法士協会 認定作業療法士。介護現場の人間関係やチームワークで悩む日々の中、どん底の時に感じた深い感謝の想いと10000回の“ありがとう”に触れ、「人やチームの問題は感謝で解決できる!」と確信。 感謝を伝える「サンクスカード」の普及と独自の理念「サンクス道」を展開する。国際学会での発表、介護情報誌での執筆活動、研修や大学での講義など行い、講義では感動で涙する受講者が続出している。 ★「感謝の文化を作ることで『利用者様への感謝』が増え、ケアする人もされる人も幸せになる『寄り添いのイノベーション』が生まれます。私自身のこれまでの経験と想いを、コラムを通じて多くの方へ伝えていきたいです。

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