働きやすい職場、環境とは…というテーマは永遠の課題とも言えます。
それはその場所で働く人によって働きやすさに対する価値観が違うからです。
例えば、あるスタッフは仕事が楽で良いという事に対して働きやすさを感じている。あるスタッフは自分がやりたいことを実施させてくれることが働きやすさだったりするわけです。
なので一概に働きやすい職場と言ってもなかなかこれという決定がないとも言えます。そんな中で逆に考えて働きにくい職場ってどんな環境なのかと考えてみましょう。業務に追われている、給与が伴わないなど…このマイナス要素をあげてもらうとこれぞとばかりに沢山の事例が出てくるわけですね。
これを照らし合わせてみれば、この働きにくい職場に上がるものを一つひとつ課題として明確にして原因を探して対策を講じていけば働きやすい職場になるのだと思われます。と頭ではわかっているのですがこれが実行できないために働きやすい職場はなかなか見つからないのです。

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ではなぜ実行できないのか?と考えることになります。多くの介護現場を見てきた中で絶対的に欠如している事があります。それは「問題に対して原因を追究しない」「考えてよくしようという行動に移さない」この2点がどこの現場でも多く見られます。いわゆる考えるのがめんどくさいという事です。
これは業務を見ていてもよく分かるのですが、身体を動かして行う業務は当然のように覚えて実施していく反面、頭を使う内容、例えば認知症ケア、記録作成、計画書作成、アセスメント作成等になると、やったことがない、分からない、習っていない(教えても覚えない)、やる気がないのようにとにかく考えないのです。だから、その不満に対しては、忙しい、大変だ、人が足りない、というキーワードしか常に出てきません。
○○のようにしてみたらどうか? ○○を△△へ変更してみたら?のような変化を問う意見はまず出ません。仮に一部のやる気あるスタッフから出たとしても、思考が苦手なスタッフに力技で抑え込まれます。そして当然、働きにくい職場という負の連鎖から逃れることが出来ないのです。
しかしながら、この負の連鎖から見事に脱した現場もあります。そこで明確に違ったのは、「行動」でした。
殆どの現場はまず否定、反対から始まります。やったことがないことを真面目に考えて、想定外のリスクを掲げてとにかくやろうとはしません。むしろ全力で反発する現場もあります。ところがこの現場は最初の説明後からの動きが大きく違いました。
きっと頭の中ではクエスチョンがあったかも知れない中で提案者の話を受け入れ、まず「やってみよう」と行動に移し始めています。
そうすると想定以上に利用者さんがまずその行動に対して反応を示します。
「それくらい出来るよ」「出来ることがあったら言って」「何をすればよい?」のようにその行動に変化が見えてきたのです。スタッフはそれを見て少しずつ頭の中の疑問が解消していきます。そして自分たちが勝手に決めつけていた事実に気づくことになります。そう…「できないと思っていた」なのです。
認知症があるから無理だろう、覚えていないだろう、危ないよね、という先入観から自分たちがその行動を制限し、出来ることを出来なくしていたという事実に気づきます。ここまで進むとスタッフもまた一つ変化します。
「これもひょっとしたらやってくれるかも」というもしかしたらに期待をするようになります。これがいわゆる自分で考えて動くという一歩目の行動心理です。ここで試行錯誤はあるものの成功体験もしっかりと積んでいきます。そうやって経験値をしっかりと積み上げて成長していくのです。この段階ではスタッフ間のコミュニケーションも活発になります。
意見として色々とお互いに言えるようになる。言える、聞ける環境の中ではストレスが減少します。そして意見をしても否定されない、いったん受容されるという安心感が生まれます。この積み重ねが働きやすい職場を生み出すのです。
ようするに働きやすい職場とは実践が行われる職場であるという事。
実践をして失敗も成功も積み重ねて来ているからこそお互いの考え方も理解されてコミュニケーションが増えます。コミュニケーションが増えれば、言った言わない、聞いた聞いてないのようなクレームも減り、ギスギスした環境が改善されているのです。

最後に「働きやすい職場」は自分たち以外が作る事が出来ません。誰かが作ってくれるわけではありません。研修だけで構築できることもありません。そこには実践からくる経験が生かされているという事です。全国の職場が働きやすいと言われるように現場で努力をしてほしいと思います。