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専門家コラム

自立支援型介助のために整えるべき介助者の構え方

第1章 足を広げる(広い支持基底面を確保する)

 介助者はまず、足を肩幅より少し広めに開いて立つことで支持基底面を広く取り、姿勢を安定させます。支持基底面とは“体重を支える床面積のこと”で、これを広くとると介助中にバランスが崩れにくくなります。広い足元は体の安定性を高め、利用者も安心して体を預けることに繋がっていきます。以下の介助場面を例に見ていきましょう。

例)ベッドや椅子から立ち上がる介助場面 
◎望ましい姿勢: 足幅を肩幅程度かそれ以上に広く取って立つ。

[足幅を横に肩幅程度に広げる+前後にも広げる]
 前後にも広げることで、第二章でも触れる“重心移動”を利用して介助することができます。具体的には、利用者が立つときには前傾し重心を前方に移動させていきます。これに対して、対面にいる介助者は重心を後方へ移動させていく必要があります。重心を後方へ移動させていくためには、支持基底面は左右方向のみではなく、前後方向も広く確保することでバランスをとりながら介助することができます。

×誤った方法: 足幅を閉じたり必要な方向に広げていない 

 支持基底面が狭かったり必要な方向に広がっていない状態では、急に利用者がバランスを崩しそうになった時に、お互い転倒したり最悪の場合骨折などの怪我を負わせてしまう恐れがあります。そこまで至らずとも、指先に力が入ってしまい、利用者に痛みや皮下出血を負わせてしまう、介助者も腱鞘炎や急性・慢性腰痛、腰椎椎間板ヘルニアを患うなど職員の身体も負傷することにもなりかねません。

☆ケアへの応用ポイント! 介助時は常に足元を必要な方向に広く開いて安定した姿勢をとろう!

第2章 重心移動を利用して介助する

 介助者は自分の重心移動を意識して介助に当たることが重要です。利用者と目線の高さを合わせることで重心の高さを揃えた上で、一体になって動くように介助することで、介助者自身の重心移動によって利用者の動作・行為をスムーズに引き出すことができます。以下の場面を例に重心移動の活用方法を見ていきましょう。

例)ベッドや椅子から立ち上がる介助場面
◎望ましい方法: 利用者と必要分近づき、膝を曲げて腰を低く落とし安定した姿勢で構える

 構えた姿勢から、重心移動はさらに膝を深く曲げながら腰を後方の足へ下ろしていきます。そうすることで、利用者の前傾による前方への重心移動を妨げることなく、円滑に引き出すことができます。その後、みぞおち付近が利用者の足の真上ほどに近づき、利用者の下肢に力が入り、殿部が浮くタイミングまで、介助者も膝を曲げて後下方へ重心を移動していきます。そこから、利用者の上に伸び上がる動きに合わせて、介助者も膝、腰を伸ばしていくことで、両者に負担が少ない介助をすることができます。

×誤った方法: 背筋を伸ばしたまま腕力だけで引っ張り上げる

 利用者は足へ重心が乗らず、下肢の力を活かすことができません。そうすると、介助量も増大し介助者の腰や腕に過大な負荷がかかります。また、利用者は腕から介助された場合、肩関節を傷めたり、亜脱臼をする恐れもあります。脇やズボンを引っ張り上げられても、当然不快であり皮下出血などの外傷を負わせる危険性があります。

☆ケアへの応用ポイント! 膝の屈伸を活かして自分の重心を移動させ、負担を少なく安全に介助しよう!

復習pointコラム 今さら聞けない⁉ 支持基底面と重心って?

【支持基底面とは】
 人が立っているとき、両足の裏が床に接している面積のことで、“左右の足の裏とその間の部分”が含まれます。杖や歩行器を使用している場合は、それが床と接している箇所とを結んだ面積になります。
【重心とは】
 物体がつり合う点の位置で、人の体の場合は“おへその下あたり”(第二仙椎の前付近)にあります。右足に体重をかけていくと重心も右へ、左へ体重をかけていくと重心も左へ移動します。
以下、支持基底面と重心の関係性を表した例を2つ見てみましょう。
例)右足で片足立ちをするとき
1.右足へ体重を乗せていく 2.重心も右へ移動する。 3.右足のみで作られる支持基底面内に重心が収まる 4.左足を上げる 5.右足のみの支持基底面内に重心が収まり続けるようバランスをとる 

 この左右の連続が足踏みになります。
 片足立ちは片方の足裏だけになるため、重心をその小さな面積の外に出て転倒しないよう、バランスをとる必要があります。重心が支持基底面内、特に中心にあれば安定し、支持基底面から外れると転倒してしまいます。
例)介助場面
 介助者の重心が支持基底面の中心にあると姿勢が安定したまま介助でき、身体への負担を軽減できます。一方で、両足をぴったりくっつけて立つなど支持基底面が狭かったり、重心が支持基底面の端に近いほど不安定となり身体への負担が増大してしまいます。そうすると、指先に力が入ったり、力づくの介助となったり、利用者に不快な想いをさせてしまいます。

以上のように、支持基底面と重心の位置関係を意識して体勢を作れば、利用者と介助者双方の安全を守りやすくなります。

☆ケアへの応用ポイント! 重心が支持基底面内に安定して収まるよう姿勢を整えよう!

第3章 高さを整える

 介助時にはベッドや車椅子など移乗先の高さを調整し、利用者が動きやすい環境を作ることが大切です。例えば移乗の前にベッドの高さを車椅子の座面と同じくらいに合わせておくと、水平に移動しやすくなります。また、介助者自身の高さも膝を曲げて体を低くすることで、自身の重心が下がって安定感が増し、腰への負担もかかりにくくなります。

例)ベッドから車椅子への移乗介助場面
◎望ましい方法:同等程度または移乗先を若干低めに設定 

例)ベッドから車椅子へ移乗 
【ベッド】
 介助前に“ベッドの高さ”と“車椅子の座面”を同等の高さに調整します。
[目安]
 利用者が車椅子に移乗した時に、①臀部が沈みこまない②足裏が全面床に着く 高さ
【介助者】
 膝を曲げて腰を落とし、利用者と同等の高さになるよう姿勢をとります。
[目安]
 利用者と目線の高さが同等程度になる高さ(膝を曲げて腰を落とす)

×誤った方法
[低いベッドから高い車椅子へ]
→利用者:低いベッドでは、下肢が必要以上に屈曲し、膝や股関節、脊柱に負担が増える。また、後方に傾いたベッド端座位になりやすい。さらに立ち上がりづらく前屈による圧迫骨折のリスクや介助量も増大する。
→介助者:低い姿勢になることで、必要以上に腕や腰、膝に負担がかかる。肩こりや腰痛、ヘルニアなどのリスクが高まる。
[高いベッドから低い車椅子へ]
→利用者:高いベッドでは、立ち上がりやすくなる反面、ずり落ちや足が浮くリスクに注意を払う必要がある。低い車椅子へ移乗する場面では、下肢に余計に負担がかかりドスンと勢いよく着座し、脊椎の圧迫骨折を起こすリスクが高まる。
→介助者:高いベッドでは、ずり落ちに注意を払い、必要に応じて利用者の身体を支える。低い車椅子へ移乗する場面では前傾姿勢が強まったり、支える負担がかかる姿勢となる。この点を想定し、介助者も深く膝を曲げながら重心を後ろに下げていく必要がある。

☆ケアへの応用ポイント!  物的環境だけでなく、介助者自身も利用者と高さをできるだけ合わせて構え(主に膝の屈伸で)、お互いに負担の少ない介助につなげよう!

第4章 体を近づける

 介助場面では基本的に利用者の体に近づくことが重要です。介助者が利用者のすぐ近くで姿勢を整えることで、両者の重心が近くなり介助する力が利用者へ伝わりやすくなります。また、利用者が入れている力や動きを感じ取りやすくなることで、誤った方向に誘導したり過小・過剰に介助することなく、利用者の力や動きに合わせて円滑に介助方法を修正することができます。

例)ベッドからの起立介助場面
◎望ましい方法:
 起立介助では、その利用者の自立度によって1.手支持 2.肘~前腕支持 3.肩甲骨後面~腋下支持の3パターンを使い分けます。(詳しい起立介助方法は今後掲載する「起立介助」の回を参照)
 このうち、最も介助量の大きい「3」の方法が必要な場合、介助者は肘を曲げ、脇を閉めた状態を保ち介助にあたります。そうすると、自然と距離が近づき、介助する力(介助者の重心移動)が利用者に円滑に伝わったり、利用者の力や動きを介助者も感じ取りやすくなります。

×誤った方法:
 一方で、支えている場所は同じでも、肘が伸びていたり脇が開き、離れて介助してしまうと、介助する力(重心移動)がうまく伝わりません。そうすると、介助者の手先や腕の力を必要以上に使うことになり、痛みや不快感に繋がります。さらには、利用者の力や動きを感じ取ったり引き出すことができず、不安定になります。介助者の力も伝わりづらいことで、いざという時に支え切れずに転倒、怪我を招くリスクを高めることになります。介助者自身にとっても手先や腕、腰への負担も大きくなり、不要に離れて介助することは両者にとって望ましくない結果となります。

☆ケアへの応用ポイント! 基本は近づいて、必要な距離を保ちながら介助しよう!

第5章 まとめチェックポイント

 以上のポイントを日々の介助で意識すれば、利用者に安心して体を任せてもらいながら、介助者の負担も軽減できます。介助者も望ましい姿勢・構えで実践し、お互いにとって安全かつ力を活かすことのできる自立支援型介助を目指しましょう。

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山﨑隆博

山﨑隆博

理学療法士医療法人社団山川会 介護老人保健施設ケアセンター 芳川リハビリテーション部 アドバイザー RehaCareSmile代表

日々の臨床に理学療法士として励む傍ら、“リハビリテーション従事者と介護従事者とが腹を割って研鑽し合う”団体「リハビリテーション*介護Labo」を2017年に立ち上げる。その中で、介護技術関連のセミナーを主催し、“洗練された技術” “揺るぎない根拠”“潜在的な想い”を兼ね備えている介護技術のプロを養成。 中央法規出版(株)発刊のおはよう21にて、連載「場面別に見る 介護技術のチェックポイント」や特集「今日から使える基本の介護技術100のポイント」などを執筆。 現在は、老健のリハビリテーション部責任者として勤務しながら介護施設の職場内研修やケアマネ等の協会主催の研修会、全国各地のセミナー等にて伝達・指導を行う。

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