ケアカレッジ「介護のココロのケア」担当、グリーフケアアドバイザーのマミコです。
許せない人がいるって、モヤモヤして本当にしんどいですよね。
ただでさえ、「キーッ!」と心は乱れていたり、傷ついているのに、
「許すことは美徳」
「許すことは大切」
「許せば楽になれる」
「許さないと、前には進めないから…」
こんな言葉を聞くたびに、許せない自分のことを責めてしまう。
あなたにも、こんな経験はありませんか?
今日は、「許せない人がいてもいい」というお話をさせてください。
許すことはそんなに簡単じゃない!
少し想像してみてください。
過去に、あなたを傷つけたり、ひどいことをしてきた人がいました。
人間はみんな不完全だし、あの人は私の知らないところで大変な何かがあってトゲトゲしていただけかもしれない…。
私だって完璧じゃないから、相手を苛立たせる何かがあったかもしれない…。
許そうと思って必死に思考してみたり、自分を納得させようと頑張ることってありますよね。
傷つけてきた人、ひどいことをしてきた人を【許すこと】は、人としても立派なことだし、許さずに怒りや悲しみを持ち続けることは、その人の影響を受け続けているだけでずっと苦しい状態が続くからこそ、許して手放すことで自分自身も楽になれること。
だから、許さなきゃ。
自分のために、許さなくては。
* * *
こんな風に葛藤をしたことは、誰しも一度はあるのではないでしょうか?
許さなくてはいけない相手が、自分と関りが薄い人や、離れてもいい人であればいいけれど、簡単には距離を置くことのできない関係性の場合だってあります。
自分の親やきょうだい、親戚や、すぐには離れられない職場の人、などなど。
「家族なんだから、許さなくちゃダメだよね」
「過去のことだもん、忘れるべき」
「いつまでも引きずって根に持つ自分の方が悪い」
「許せないなんて、私はなんて器が小さいんだろう」
そんな風に、自分を責めてしまっていませんか?
でも、ちょっと待ってください!!
自分を傷つけてきた人、自分を斬り付けてきた人を許すって…
そんなの簡単なわけないですよね!!!(力説)
自分のことを傷つけてきた人、悲しくて涙が何日も流れるような経験をさせた人のことを許すのは、とても難しくて当然ではないでしょうか?
許せたほうが楽になれるのだから、許したい。
許せた方がいいって分かってるもん!!
でも…
って葛藤するのは、当たり前じゃないでしょうか?
許したくても許せない。
許すことができないからといって、あなたがダメなわけではありません。
許せないのは、あなたがダメだからでも、心が狭いわけでもありません。
それだけあなたが深く傷ついた、ということなんです。
まずは、「許せない自分」を許してあげませんか?
許せないくらいに「傷つけられた」んですものね。
許すことを”頑張らないといけないくらい”に、許したくないことをされたんですものね。
許したくないのに、許そうとするあなたは、なんと暖かい心を持つ頑張り屋さんなのでしょう。
それなのに…
こんなにも頑張っているのに、許せないでいる自分のことを「ダメだ」「心が狭い」と責めてしまっていたら、自分がどんどん疲弊してしまいます。
苦しいのに頑張っていることを、自分が認めてくれずに責められてしまったら、許すことを頑張ろうにも頑張る力が湧いてこなくなっちゃいますよね。
なぜか私たちは、一番大切で、一番理解してあげなくてはいけない自分自身に対して、誰よりも厳しいまなざしを向け、自分に対して冷酷になってしまいます。
許せなくて苦しんでいる自分の背にそっと触れ、「しんどいね」って言ってあげることもせず、「許せないなんて、ダメだよね」って、自分に追い打ちをかけてしまう。
でも、それ、本当に必要なことでしょうか?
相手の立場に立って考えよう、相手を理解する努力をしようとしてもできないのは
あなたの心が、まだ許せる状態ではない
からなのではないのでしょうか?
許したいのに許せない、その「許せない」という大切な自分の気持ちも、大事に尊重してあげていいんです。
許せないものは、許せない。
今はまだ、許せない。
自分の気持ちに「そう思うんだね」「そっかそっか、そりゃそうだよね」と、まずは言ってあげませんか?
自分の気持ちばっかり押しつぶそうとしなくていいんです。
自分の気持ちを押し殺してまでも、自分を傷つけなくていいんですから。
自分の正直な気持ちを分かってあげたい!と、自分の声に耳を傾けてあげませんか?
「許さないといけない」のかもしれない。
そうできた方がずっとずっと楽になれるのかもしれない。
でも「今はまだ許せない」という、大切な自分の気持ちを認めてあげましょう。
「許せない自分」「許したくない自分」を否定して嫌うのではなく、
「許せないと感じるほどの出来事があったんだもんね」
「許せないと思うくらい傷ついたんだもんね」
と、自分の気持ちを大切に大事に認めて、分かってあげる。
傷つきながらも頑張っている自分に、優しく寄り添ってあげる。
きっと、それが『自分を大切にする』ということなのかもしれません、ね。
すべてはきっと「成長のプロセス」
笑ったり、恋したり、喜んだり、浮き足立ったりする楽しい出来事も、「なんで私がこんな目に…」と悶えるような苦しみや悲しみも、理不尽な出来事も、すべては「体験すること」で得られるものがあります。
もちろん誰だって、苦しみや悲しみ、痛みや涙は体験したくないと思うけれど、それだって「体験したことがあるから」そう思えるんですよね。
もうこんな思いはしたくない、と。
体験していなければ、悲しみや苦しみがどんなものかは分からないのですから。
辛い経験、悲しい経験、怒りを感じる経験。
これらはあなたを壊したり傷つけるだけではなく、全てが、あなたをより深く、より強くしなやかに、より優しい人間にするための”プロセス”なのかもしれません。
その経験があったからこそ、あなたは誰かの痛みを理解できる人になれたかもしれません。
その経験があったからこそ、あなたは本当に大切なものが何かを知ることができたかもしれません。
その経験があったからこそ、本当の強さとは何かを学んだかもしれません。
なんでこんな目に…
なんでこんな体験をしなくてはいけなかったの?
その答えは、すぐには分からないものですし、あの体験のおかげでと言えるのはずっとずっと未来になってからかもしれませんが、許せないと思うほどの体験をしたあなたは、同じように「許せないでいることで苦しんでいる人」の気持ちを分かり、優しく背中をさすってあげる「暖かい手」を持っています。
それは本当に大きくて、強くて暖かい、愛の手です。
自分にエールと優しい言葉を送ってあげましょう
あなたはここまで、本当によく頑張ってきました。
その頑張りを一番よく知っているのは、あなたです。
許せないと思うくらいのことをされたのに、許そうと努力したあなたは、なんて素敵な人でしょう。
「よく頑張ったよね」「苦しい中でも努力したよね」「カッコいいよ!」って、自分に暖かいまなざしを向けてあげてください。
許せないでいる今の自分に、「許せるようにならねば!」と無理強いさせるのは一旦お終いにしましょう。
許したくないことをされたのに、許そうと頑張るなんて並大抵のことじゃないよ。
勇敢に懸命に頑張ろうとした私のことを誇りに思うよ。
こんなに頑張れる私だもの、この先の未来にはいいことがいっぱいあるよ!!
自分にいっぱい、エールと優しい言葉や労いを送ってあげてください。
あなたは、できれば体験したくないつらい体験や痛み、時には恥ずかしさを伴うような許しがたい体験をしながらも、生き延びてきたのです。
それだけではなく、つらい体験に向き合い「許そう」とまでしたのです。
あなたはとても強く、勇敢で、立派な人です。
そして優しく、暖かい、素敵な人です。
許すことだけが「正解」ではありません。
許せないことが「間違い」でもありません。
なによりも大切なのは、あなたがあなた自身を大切にすること。
許せない人はいたっていい。
許せない気持ちを抱えたままでいてもいい。
ただ、その気持ちに振り回されて、あなた自身を傷つけたり痛めつけることだけはしないでください、ね。
許せない気持ちを抱えている自分を、どうぞ、責めないで。
許せなくても、あなたはあなたのままで素晴らしいのだから。