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褥瘡・拘縮予防のための基礎知識~「なぜ起きるのか」を知ることが、予防の第一歩~

はじめに

 介護現場では、「気づいたら褥瘡ができていた」「いつの間にか手や足が固まっていた」という経験が少なくありません。しかし、褥瘡や拘縮は突然起こるものではなく、日々の姿勢や介助方法の積み重ねによって生じます。

 特に寝たきりや活動量が低下した利用者では、身体にかかる圧力や動かさない時間が長くなりやすく、褥瘡や拘縮のリスクが高まります。だからこそ介護職には、「なぜ起きるのか」「どう予防するのか」を理解したうえで日々のケアに取り組むことが求められます。

 褥瘡や拘縮は、利用者の生活の質を低下させるだけでなく、介護負担の増大にもつながります。しかし、その多くは日々の観察や適切な介助によって予防できます。

 今回は、褥瘡と拘縮の基礎知識から、現場で実践できる予防の考え方までを解説します。

第1章:なぜ皮膚は傷つくのか?褥瘡の正体を知ろう

「昨日までは赤くなかったのに、今日オムツ交換をしたら仙骨部が赤くなっていた。」
「毎日ケアしていたのに、いつの間にかかかとに傷ができていた。」

 褥瘡は突然できたように見えます。しかし実際には、褥瘡は突然できるわけではなく、その前から身体の中では組織の損傷が始まっています。

 褥瘡とは、一般的に「床ずれ」と呼ばれるものです。下の流れのように、身体の同じ場所に圧迫が続くことで、皮膚や皮下組織が損傷した状態を指します。

【長時間同じ姿勢】
→【骨の出っ張り部分が圧迫される】
→【血管が押しつぶされる】
→【血流が低下する】
→【酸素や栄養が届かなくなる】
→【組織が壊死する】
→【褥瘡が発生する】

 人の細胞は血液によって酸素や栄養を受け取っています。そのため、血流が途絶えると組織は生きていくことができません。特に骨が皮膚のすぐ下にある部分は注意が必要です。以下に姿勢毎に好発部位をご紹介します。

[臥位(あお向け]後頭部・肩甲骨・肘・仙骨部・かかと
[側臥位(横向き)]耳・肩峰部・肋骨部・腸骨部・大転子部・膝関節部・外くるぶし

 また、原因には「圧迫」だけでなく「ずれ」と「摩擦」も重要な発生要因と考えられています。
 例えば、
【背上げした状態で身体が下へずれる】
→【皮膚はシーツに固定される】
→【内部組織だけが引っ張られる】
→【深部組織が損傷する】
→【褥瘡発生リスクが高まる】

 さらに、
✓低栄養 ✓脱水 ✓麻痺 ✓感覚障害 ✓活動量低下 なども褥瘡を悪化させる要因です。

Point! 褥瘡は「圧迫・ずれ・摩擦」が続いた結果として起こることを理解しよう!

第2章:動かさないことで起こる身体の変化―拘縮のメカニズム

「以前は手が開いていたのに、最近は握ったままで爪切りが大変になった。」
「ズボンを履く時に膝が伸びず、更衣介助に時間がかかるようになった。」

 拘縮もある日突然起こるものではありません。少しずつ身体を動かさない時間が積み重なることで進行していきます。
 拘縮とは、関節の動きが制限された状態です。具体的には、“曲がらない”“伸びない”“開かない”状態を指します。構造的に、関節は骨だけで動いているわけではなく、周りの筋肉、腱、靱帯、関節包、皮膚といった組織が協調して動くことで関節可動域が保たれています。

 しかし動かない、動かせない状態が続くと、
【活動量低下】→【筋肉を使わない】→【筋肉が短縮する】→【関節周囲組織が硬くなる】→【関節が動かしにくくなる】→【拘縮が進行する】
という変化が起こります。

特に脳卒中後の麻痺やパーキンソン病などの中枢神経系の疾患がある場合は、
【筋緊張の亢進】→【同じ姿勢を取り続ける】→【筋肉の短縮】→【拘縮形成】
という経過をたどることもあります。
 例えば手指では、【手を握った状態が続く】→【指を曲げる筋肉ばかり使う】→【伸ばす筋肉が働かない】
→【指が開かなくなる】
という変化が起こります。

 拘縮は単なる身体の硬さではありません。更衣、整容、食事、入浴、移乗など生活全体に影響を及ぼします。そしてそれは、原疾患だけではなく日頃の関わりの中で助長される二次的な障害であることを念頭に置かなくてはいけません。

Point! 拘縮は「動かさない・動かせない時間とそのケアの積み重ね」で進行することを理解しよう!

第3章 なぜ褥瘡や拘縮はなくならないのか?現場に潜む原因 

 「転倒すると危ないから、とりあえずベッドで休んでもらおう。」
 「介助した方が早いので、職員が全部やってしまう。」

 利用者を思って行っているケアが、実は褥瘡や拘縮を進行させる原因になっていることがあります。先ほどもお伝えしたように、褥瘡や拘縮は病気だけが原因ではありません。介護環境や介助方法によっても発生・進行します。

 例えば、
【寝返りが少ない】→【圧迫が続く】→【血流低下】→【褥瘡発生】
【ベッドや車いす上で身体を引きずる介助】→【摩擦・ずれが発生】→【皮膚損傷】→【褥瘡リスク増大】
となります。

 拘縮についても同様です。
【全介助で移乗する】→【不安定で筋緊張が高まる】→【利用者自身で膝を伸ばす機会損失】→【座っている時間が長い】→【拘縮が進行する】という悪循環が生まれます。

 このように、利用者のできることをアセスメントせずに、介助者本位で行う【過介助】もも拘縮を進行させる要因です。つまり、本来持っている能力を発揮できる環境づくりが重要になります。

また、万が一拘縮を形成してしまっても、「もう仕方ない」「固まってしまった」と捉える考え方も危険です。
「関わりの中で緊張を高めてしまっている触れ方や動かし方をしてはいないか?」
「着替えや入浴の時間の中で、関節を安全に動かせる場面はないか?」
といった、予防・改善の視点がなければ悪化の一途を辿る可能性を高めてしまいます。

私たちの仕事は、例え臥床時間を確保せざるを得ない状態の方であったとしても、「仕方ない」と考えず、「できること」を見つけ支援することです。
その視点、技術を持ってこそ、プロとしてのケアです。

Point! 現場にある原因を見つめ直しましょう!

第4章 予防のカギはポジショニングと日常生活の中にある

「ポジショニングはクッションを入れることだと思っていた。」
「リハビリはPT・OTが行うものだから、介護職は関係ない。」

 そんな声、様子を多くの現場で見聞きします。しかし実際には、褥瘡や拘縮の予防で最も長い時間関わるのは介護職です。食事や更衣、排泄、入浴などの日常生活の場面こそが、予防と改善の大きなチャンスになります。
 褥瘡や拘縮予防の中心となるのがポジショニングです。

 ポジショニングとは、【身体を適切に支える】→【圧力を分散する】→【姿勢を安定させる】ための技術です。

 寝たきりの利用者では、適切に支えることで身体を面で支えられ【接触支持面積が増える】→【圧力が分散する】→【褥瘡予防】につながります。
 さらに、【姿勢が安定する】→【過剰な筋緊張が軽減する】→【力が抜ける】→【拘縮予防】にもつながります。
 しかし本当に大切なのは、ポジショニングだけではありません。実は日常生活そのものがいわゆる生活リハビリに相当するからです。例えば、【更衣】→ 脇や腕開く、膝を伸ばす。 【入浴】→ 手足の関節を動かす、開く。
【移乗】→ しっかりと立つ→ 足踏みをして方向転換する。
 このような介助の積み重ねが、【関節を動かす→筋肉を使う→血流が促進される→褥瘡・拘縮予防】につながります。

 専門職による訓練も重要ですが、利用者と最も長く関わるのは介護職です。
 だからこそ、【日常生活での適切な介助→身体機能の維持→生活機能の維持・向上→生活の質向上】という視点を常に念頭に置いて支援していきましょう。

Point!「生活の場こそが予防・改善の要」という視点で関わりを持とう!

おわりに・チェックシート

 褥瘡も拘縮も、一度進行すると改善に長い時間がかかります。しかし、その多くは日々の観察や適切な介助によって予防できます。 介護職に求められるのは、「褥瘡ができたら対応する」「拘縮が起きたらリハビリする」という発想だけではありません。

 利用者の身体に何が起きているのかを理解し、「なぜこの姿勢なのか」「なぜこの動きを引き出すのか」を考えながらケアを行うことが大切です。
 介護技術とは単なる作業ではなく、利用者の身体機能と生活を守るための専門技術です。チェックシートを参考に活用しながら、褥瘡や拘縮の予防を通して、【身体機能を守る】→【生活の質を守る】→【その人らしい暮らしを支える】ことにつなげていきましょう。

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山﨑隆博

山﨑隆博

理学療法士医療法人社団山川会 介護老人保健施設ケアセンター 芳川リハビリテーション部 アドバイザー RehaCareSmile代表

日々の臨床に理学療法士として励む傍ら、“リハビリテーション従事者と介護従事者とが腹を割って研鑽し合う”団体「リハビリテーション*介護Labo」を2017年に立ち上げる。その中で、介護技術関連のセミナーを主催し、“洗練された技術” “揺るぎない根拠”“潜在的な想い”を兼ね備えている介護技術のプロを養成。 中央法規出版(株)発刊のおはよう21にて、連載「場面別に見る 介護技術のチェックポイント」や特集「今日から使える基本の介護技術100のポイント」などを執筆。 現在は、老健のリハビリテーション部責任者として勤務しながら介護施設の職場内研修やケアマネ等の協会主催の研修会、全国各地のセミナー等にて伝達・指導を行う。

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  3. 自立支援型寝返り介助の実践と応用〜「黄金ルール」を現場の力に変える具体的手順〜

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