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専門家コラム

「失敗談」を語れるチームは強い

はじめに

「最近、仕事でどんな失敗をしましたか?」
もしミーティングでこう聞かれたら、皆さんはどう答えますか。「特にありません」と無難にやり過ごすか、それとも自らの失敗した体験を打ち明けることができるでしょうか。
多くの職場で、失敗は「隠したい恥ずかしいこと」や「評価が下がる原因」と思われがちです。実践報告会や研修会などでもうまくいった報告が並ぶことが多くみられます。
しかし、チームワークがよく、逆境にも強いチームを観察してみると、ある共通点があります。それは、メンバーが自分の失敗談を自然に話すことができているということです。
なぜ、失敗を語れる人がいるチームは強いのでしょうか。その3つの理由と、チーム作りのヒントを整理してみました。

失敗談はチームのミスを防ぐ教科書になる

本やネットに載っている「成功談」をそのまま真似しても、同じようにうまくいくとは限りません。成功には、そのときの状況や偶発性など、さまざまな要素が大きく関わっているからです。
一方で、「失敗」の理由は共通している点があります。
「大丈夫だろうと思い込んで確認を怠ってしまった」
「言葉足らずで、相手に意図が正しく伝わっていなかった」
「スケジュールを詰め込みすぎて、見落としが出てしまった」
業種や職種が違っても、ミスの原因には似たパターンがあります。つまり、成功の再現は難しくても、失敗は繰り返してしまう可能性が高いのです。そのため、一人の失敗談が、チーム全員のミスを未然に防ぐ教科書になるとも言えるでしょう。

「ミスを言っても大丈夫」という空気が生まれる

最近よく耳にする「心理的安全性」という言葉があります。「みんなが遠慮せずに、思ったことを素直に言える環境」のことです。
この安心感は、「みんなで仲良くしよう」と呼びかけるだけでは生まれません。「自分の弱みを見せても、責められたり除外されたりしなかった」という具体的な体験があって初めて作られていきます。
特に、先輩やリーダーが「実は昔、こんな大失敗をして怒られたことがある」「今日の打ち合わせ、準備不足で反省している」と素直に話すと、周囲はホッとします。
「完璧でいなくてもいいんだ」
「ミスをしても、人格まで否定されるわけではないんだ」
そう思えるからこそ、後輩や若手も「ここが分からないので教えてください」「締め切りに間に合わないかもしれないので、手伝ってもらえませんか」と、手遅れになる前に相談できるようになります。

「犯人探し」ではなく「仕組みの改善」に目が向く

失敗を話せないチームでは、問題が起きたときに「誰がやったのか」という犯人探しが始まります。責められるのが怖いため、人はミスを隠したり、報告を後回しにしたりしてしまい、かえって傷口を広げてしまいます。
一方で、日頃から失敗を共有できるチームでは、「誰のせいか」ではなく「なぜ起きたのか」「どうすれば二度と起きないか」という仕組みに目が向きます。
「注意力が足りなかった」で片付けるのではなく、「夕方の疲れやすい時間帯に、一人だけで確認する手順そのものが危なかったのではないか」と考えることができます。語られた失敗談は、仕事の進め方をより良くアップデートするための貴重なヒントになります。

チームで失敗談を共有しやすくする3つのコツ

では、どうすればみんなが気兼ねなく失敗を話せるようになるでしょうか。意識したいポイントは次の3つです。

① まず先輩やリーダーから話す(自己開示でハードルを下げる)

多くの人が職場でミスを隠してしまう一番の理由は、「能力がないと思われたくない」「評価を下げられたくない」という不安や恐怖心です。特に経験の浅いメンバーや若手ほど、上の立場の人を「ミスをしない完璧な存在」に見立ててしまい、自分の弱みを見せることに強い抵抗を感じます。
この心理的なハードルを下げられるのは、立場が上の人の「自発的な自己開示」です。
●実践のポイント
・会議の冒頭などで軽く触れる: 週の定例ミーティングや朝礼のちょっとした雑談で、「実は今週、こんなやらかしをしてしまって……」とリーダーから切り出してみます。
・指導やフォローの場面で添える: メンバーが困っているときやミスをしたときに、「自分も昔、同じようなところでつまずいたよ」と過去の失敗を差し出します。

②「気づき」や「工夫」を添えて話す(愚痴で終わらせない)

失敗談をただ感情のままに吐き出すだけでは、職場の空気が重くなったり、「反省していない開き直り」と受け取られたりしてしまうことがあります。失敗談をチームの役に立つ情報へと昇華させるためには、「その経験から何を得たのか」をセットにして共有することが大切です。
●実践のポイント
・学びや対策をひとこと添える: 「こういうミスをして迷惑をかけたけれど、ここが盲点だったと気づいた」「それ以来、リマインダーを前日に設定するようにしている」といった前向きな振り返りを添えて話します。
・オープンな場で共有する: チャットツールや日報などに「今週のヒヤリハットと気づき」といった共有コーナーを設け、気軽に書き込める空気を作ります。

③話してくれた勇気をまず褒める

ミスやトラブルを打ち明けられたとき、相手の「第一声」がその後のチームを大きく左右します。開口一番に「なんでそんなことしたの?」「前にも注意したよね」と強い言葉で詰問してしまうと、報告した側は心を閉ざし、以降は不都合な事実を隠すようになってしまいます。
●実践のポイント
・まず報告そのものに感謝する: 「手遅れになる前に、早く教えてくれて助かった」「言い出しにくかったと思うけれど、共有してくれてありがとう」と言葉に出して伝えます。
・人と問題を切り離す: 個人の能力や性格を責めるのではなく、「起きてしまった事象」に焦点を当てます。「起きたことは仕方がないから、今どうリカバリーできるかを一緒に考えよう」と伴走する姿勢を示します。
・チームの改善につなげる: 事態が落ち着いた後、「このミスは他の人でも起こりそうだね。チェックリストに1項目足しておこうか」と、業務の仕組みそのものを良くする方向へ導きます。

おわりに

ミスを極端に恐れるチームは、一見きちんとしているように見えても、新しい挑戦ができません。前例のないことに挑めば、うまくいかないことが起きるのは当たり前だからです。
「失敗談を語れる人がいる」ということは、そのチームが挑戦を恐れず、痛みを学びに変える力を持っていて、お互いを支え合えている証拠です。
今日あった小さな失敗を、ユーモアと次のヒントとして職員間で共有してみませんか。その小さな一歩が、逆境に負けない強いチームを作るきっかけになります。

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小山智彦

小山智彦

認定作業療法士

「感謝には人やチームの課題を解決する力がある」と考え、感謝の気持ちを伝える「サンクスカード」の普及に取り組んでいる。国際学会での発表や執筆活動、研修や大学での講義などを通じて感謝の文化づくりと幸せな職場づくりを推進し、「ケアする人もされる人も幸せになる」ことを目指している。 日本作業療法士協会 認定作業療法士/日本実務能力開発協会 認定コーチ/一般社団法人Well-Being DESIGN 認定Well-Being Dialogue Cardファシリテーター/ポジティブ心理学実践インストラクター

  1. 「失敗談」を語れるチームは強い

  2. 「見習いたいことワーク」がチームにもたらすもの

  3. 他職種リスペクトのチームビルディング

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