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専門家コラム

リーダーには椅子に座って考える時間が必要

どれだけの時間をデスクワークに充てられていますか?

リーダーには椅子に座って考える時間が必要です。
特に、現場のシフトに入りながらリーダーを務めている人は、現場から離れて考える時間が必要ですよ、という話です

まず、「動きながら考える」とか「走りながら考える」というのは、なかなか最初の第一歩を踏み出せない人への動機づけとしては、大変良い言葉だと思います。
でも、もうすでに日々の業務に追われている状況にある場合、「動きながら考える」というのは非常に厳しいです。

ちなみに、私も実験的にある介護施設で、認知症の方のトイレ誘導を行いながら、当面の課題をどうするか、考えをまとめてみる、というチャレンジをしてみました。
結果は、結局のところ、すぐに課題のことはすっかり忘れ、手すりからなかなか手を離さない利用者の世話に没頭していました。現場というのはそういうものです。

現場のシフトをこなしながらリーダー的な役割を担う人をプレイングマネージャーといいますが、利用者の安全を保ちつつ、同時に全く別の管理業務を行うのは大変難しいです。
ですので、介護施設におけるプレイングマネージャーには、ルールとして、1日2時間とか、週に1日とか、3日に1回とか、デスクワークの時間を、最初からシフトに組み込むことを提案します。

これまで多くの現場を見てきましたが、リーダーの多くは、現場業務のシフトにも、夜勤のシフトにも入りながら、リーダー業務も行っています。
リーダー業務といえば、「来月のシフト作成」「欠勤等のシフト調整」「ユニット職員への情報共有」「ユニット職員の教育」「イベント等の計画」「生活用品等の在庫確認、発注」「委員会などの取りまとめ」「家族への連絡調整」「リーダー会議の参加」などなど…。
組織活動の一翼を担う重要で重たい業務はもちろんですが、一方で、家族とのコミュニケーション、ケアのルールの取り決め、他職種連携のための調整など、誰がやったらいいのかわからない雑多な業務は、だいたいどこでもリーダーに振られるものです。
では、そうしたリーダー業務はいつやっているのか? ほとんどは、通常業務や夜勤の合間、そして休憩時間にやっています。家に持ち帰ってシフト作成をしているリーダーも多くいます。中には、そもそもリーダーとしての仕事は残業でやるものだ、と思い込んでしまっている人もいます。
そんな働き方をしているリーダーを見て、いったい誰が「私もリーダーになりたい!」などと思うでしょうか? むしろ「リーダーになったら仕事が増えて大変だ」「罰ゲームだ」と思われてしまいます。

そもそも、介護職員の中には、「利用者と優しい日々を過ごす」というイメージが動機となりこの仕事を選んだ人が多く、逆に「職員をまとめてリーダーになる!」というイメージをもって介護職を選ぶ人はほとんどいないのです。
はっきり言います。介護職において、リーダーになりたい人はいません。
だからこそ、組織的に、「リーダーを育てる仕組み」や「リーダーとして役割を果たせる時間」を作るなど、リーダーのための環境整備をしておかないといけないのです。
多くの施設で、こうした環境整備ができていないために、現場でしっかり業務をこなせていた優秀な職員が、リーダーに任命された途端に潰れ、退職や鬱に追い込まれる事態になってしまうのです。

「組織の未来を考える時間」へのシフト

「リーダー向き」の人をリーダーにする、ということも重要です。
管理者の皆さんにはぜひ、組織活動に貢献できそうな「リーダー向き」の職員は早めに引き上げて、チームワークを強化していくことをお勧めします。
リーダーシップとは、「やりたいからできる」訳ではなく、本人は自信がなくとも、「リーダー向き」という人もいるのです。

ちなみに、私の場合、介護施設に就職した初日に管理者のところに行き「僕を主任にしてください、知識も経験もありませんが、ここの職員を立派にまとめて教育して見せます」と言いましたけどね(自慢)
ですが、僕の上司は、私に主任を任せてくれませんでした。「こいつに主任を任せたら破滅する」ということを見抜いたんでしょうね。さすがです。やる気があってもできるかどうかは別の話、ということです。

話は戻りますが、勤務年数が長くなり、役職が高くなるほど、期待の比重は、「目の前の現場の業務をこなすこと」から、「組織貢献」や「人材育成」へとシフトしてきます。それに伴い、充当する時間の配分も、「利用者の今を支える時間」から「組織の未来を考える時間」へとシフトしていかなければなりません。つまり、デスクワーク時間への配分率を上げていかなければならないのです。
現場あるあるで、「今、人手不足なんだから、施設長も現場に出て手伝ってくださいよ」といった無責任な発言をよく聞きますが、施設長には施設長としての組織の未来を計画する大事な仕事があるのです。
そういったことを教えるのもまた「人材育成」の一つなのです。

まとめ

最後にもう一度。リーダーには椅子に座って考える時間が必要です。
現場に入りながらリーダー業務もできる器用な職員もまれにいますが、そんな人はそうそういません。
「人がいないから仕方ない」といってリーダーに全ての責任や負担を負わせるのではなく、人を増やすための仕掛け作りや、時間がなくてもマネージメントできる環境づくりを進めることもまた管理者の仕事です。
誰が悪い、ではなく、仕組みがないことが問題だ! という視点で、業務改善を進めてみてはいかがでしょうか。

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知野吉和

知野吉和

介護人材育成アドバイザー・介護教員

新潟県加茂市出身・福祉系の専門学校卒業後、老人保健施設、特別養護老人ホーム、福祉用具貸与事業所、居宅介護支援事業所を経て、ヘルパー2級講座の講師を27歳から始める。その後現場の介護職員を対象とした研修講師を務め、10年ほど前から業務改善の支援を行う。組織改善において、あらためて思うことは、現場職員のスキルアップよりも、やるべきことは、組織のルールづくりです。管理者、リーダーの役割を明確にすることが内部統制、チームビルディング、生産性の向上につながります。感情労働であるからこそ、現場に振り回されないために、ルール作り、組織づくりの基本に立ち返ることをお勧めいたします。

  1. リーダーには椅子に座って考える時間が必要

  2. 量(数)の後に、質がある

  3. 介護施設と家族の関係

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