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サンクスカードの効果 ~個人レベル編~

サンクスカードとは?  

 サンクスカードは、感謝の気持ちを伝えるためのカードで、学校や企業、医療・介護の分野等でも導入している施設は増えてきています。それほど、個人やチーム、コミュニティにおいて、感謝の心や言葉のコミュニケーションが重要視されている傾向が強まっていると考えられます。サンクスカードの運用方法は様々な方法がありますが、専用のポストを作り、職員は自由にメッセージを書きポストに投函する、といった仕組みで行っている施設が多いようです。
 サンクスカードを職場で導入することで、個人レベルと対人レベルで様々な効果があることがわかっていますが、今回は個人レベルでの効果について、私が実際に職場で導入した際のことを踏まえ、ご紹介したいと思います。

サンクスカードを書くことの習慣化で得られる効果

①感謝の種を発見する感謝神経が磨かれる

感謝の習慣を持つことで、意識的にポジティブな経験や出来事に目を向けるようになり、感謝の種を見つけることができる感謝神経(感謝に敏感になる神経。私が考えた造語です)が磨かれます。例えば、サンクスカードに感謝したことを書き留めることは、日常生活にある小さな幸せや恩恵を意識的に見つけるきっかけとなります。このプロセスを繰り返すことで、自然とポジティブなことに意識を向ける習慣が身につき、感謝神経が磨かれ、感謝する出来事に意識が敏感になっていきます。

②人・事象をプラスの視点で見る習慣

感謝の習慣は、出来事や状況を新たな視点で捉える力を養います。たとえば、困難な状況やストレスの多い出来事に直面したときも、その中にあるポジティブな側面や学びを見つけ出す力が身につきます。これを「認知のリフレーミング」と言い、サンクスカードを書く習慣をもつことにより、ネガティブな出来事であっても、ポジティブな感謝の意味付けで捉えることができ、全体的な視点がポジティブな視点へと変わっていきます。

③ポジティブ感情が幸福感を高める

感謝の習慣を持つことは、日常生活の中でポジティブな側面に焦点を当てる機会を増やします。サンクスカードを書く際、日々の中で感謝できることを探すようになるため、自然とポジティブな出来事や経験に意識が向きます。これにより、ポジティブな感情が増え、幸福感が高まります。
またサンクスカードを書くことは、ポジティブな経験を再び思い出し、再体験するプロセスになります。そのため、ポジティブな感情が再度喚起され、幸福感が強化されます。例えば、良い出来事を思い返し、その瞬間の感情をもう一度感じる(味わう)ことで、ポジティブ感情が持続し幸福感が高まっていきます。

④感謝を伝えるスキルの向上

サンクスカードを書くことは、自分の感謝の気持ちを言葉で表現する(相手に伝える)練習になります。毎日感謝の内容を具体的に書くことで、感謝の気持ちを的確に伝えるための言葉や表現が豊かになります。これにより、実際に感謝を伝える際に、より具体的で相手の心に伝わる表現ができるようになります。
また上司になった場合、感謝を伝えることが減少するといった報告もあります。そのため、上司は部下に適切に感謝を伝えるために、サンクスカードを活用するなど工夫をしながら、感謝を伝えるスキルを磨いていくことが大切になります。

⑤マインドフルネス

マインドフルネスの中にジャーナリングという手法があります。ジャーナリングは頭に思い浮かんだことを紙に書きだすことで「書く瞑想」とも言われています。その効果は、心が整理され心身の健康に繋がるとも言われています。
私は「サンクスカードを書く」ということは、「感謝がテーマのジャーナリング」だと考えます。サンクスカードは即時的に感謝を表出するのではなく、感謝をカードに書くという作業を行うことで、感謝をかみしめる(味わう)ことができるようになります。その結果、瞬間的な親切の出来事だけではなく、自分を取り囲む世界への認識の変化や、それを今ここで意識している自分自身への焦点化が行われるようになります。これはマインドフルネスの効果の一つだと考えられます。

サンクスカードの良さ

また、サンクスカードならでは良さとして、職員へのインタビュー調査を行った結果、以下のようなことも分かってきました。
〇感謝の記憶を強化
 記憶は「記銘・保持・想起」に分かれます。サンクスカードは記憶のプロセスの中で全てに肯定的な影響を与え、感謝の記憶を形成していることがわかってきました。
〇時間的ズレのカバー
 サンクスカードは、その場で伝えられなかった、または伝えそびれた際、事後的な感謝を可能にしてくれることもサンクスカードの良さの一つです。日常にある感謝のすれ違いをフォローしてくれる働きがあります。
〇想いの伝達
 どう感じたか、その後どうなったかなど詳細な情報をサンクス―ドに加えることで、ありがとう以上の思いを伝えられ、対人関係が深まることがわかってきました。また、サンクスカードを受け取ることで、些細な親切が目に見えないところで重大な影響を与えていた可能性を知る事もできます。

個人レベルから対人レベルへ

 職員へのインタビュー調査から、サンクスカードの良さは、個人レベルでの変化が、対人レベルへの変化に発展していくことだということがわかりました。個人レベルでのポジティブな認知への変化は、対人関係の改善や絆を強め、良好な協力関係を生み、職場での働きやすさにつながっていきます。そして、そのような良好な人間関係が生まれることで、より個人レベルでの変化を促進していきます。つまり、個人レベルと対人レベルはお互いに高め合う関係をもち、それこそが「サンクスカード独自の機能だ」と考えられます。

感謝の心が良いチームを創る

 このようなサンクスカードの機能を活用することで、良好なチームワークを生み出すことができます。サンクスカードを使うことで、チームメンバー同士が感謝の気持ちを表現しやすくなります。ポジティブなフィードバックや感謝の言葉が増えることで、チーム内のコミュニケーションが活発になり、信頼関係が強化されます。ポジティブなコミュニケーションは、チーム全体の雰囲気を明るくし、協力的な環境を育みます。
 また、サンクスカードを通して感謝の言葉を受け取ることで、チームメンバーは自分の努力が認められていると感じ、モチベーションが向上します。サンクスカードを通じて具体的な感謝のメッセージを伝えることで、個々のメンバーが自分の役割や貢献に対して誇りを持ち、より積極的に仕事に取り組むようになります。
 感謝の心を大切にすること、またサンクスカードとチームワークについては、以前のコラムでも書きました。ぜひこちらもご覧ください。
https://care-college.jp/expert-column/heart-of-gratitude/

 サンクスカードは個人レベルでの変化だけでなく、対人レベルにもポジティブな影響を与え、良質な感謝の循環が生まれます。チーム内に、感謝の良循環が生まれるよう、ぜひサンクスカードの活用をオススメします。

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小山智彦

小山智彦

認定作業療法士 感謝の伝道師

日本作業療法士協会 認定作業療法士。介護現場の人間関係やチームワークで悩む日々の中、どん底の時に感じた深い感謝の想いと10000回の“ありがとう”に触れ、「人やチームの問題は感謝で解決できる!」と確信。 感謝を伝える「サンクスカード」の普及と独自の理念「サンクス道」を展開する。国際学会での発表、介護情報誌での執筆活動、研修や大学での講義など行い、講義では感動で涙する受講者が続出している。 ★「感謝の文化を作ることで『利用者様への感謝』が増え、ケアする人もされる人も幸せになる『寄り添いのイノベーション』が生まれます。私自身のこれまでの経験と想いを、コラムを通じて多くの方へ伝えていきたいです。

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