医療介護福祉の学び情報メディア

専門家コラム

組織の真の課題は見えていますか?

アンケート調査で改善効果は出ていますか?

組織の課題は大きく3つ。でも、アプローチは1つですよ、という話です。

おそらく多くの介護施設で、現場の問題、課題の洗い出しを目的として、職員へのアンケート調査を実施していることと思います。
アンケート調査をして、現場の不満や要望を集め、それをもとに改善しましょう、という流れは間違いではありません。
ただ、現場の不満や意見をそのままダイレクトに受け止めて、要望どおりに応えて、改善策を図っても、実際には期待するほどの効果が得られないことが多いです。
私も、はじめの頃、こうしたアプローチをして失敗続きでした。
なぜ、うまくいかなかったのか? それは根本解決ではないからです。
では、いったい何が必要だったのか?
「この職員が本当に言いたいことは何か?」「この問題の中心にあるものは何か?」
まずは、問題の根本を突き止める、つまり「見える化」の必要があったのです。

そこで、私は、これまで実施したアンケート調査から、介護職員さんの不満や悪口、提案などなど、そうした現場の声を「ひとりワークショップ」で分類してみました。
今なら、AIを使えば、簡単で効率的にまとめられるかもしれませんが、手作業で見つける方が自分の信念になるのでオススメです。

組織の課題は3つある

さて、ここからが今回の本題です。
現場の声を分類してみると、組織の課題は、次の(1)~(3)のように、大きく3つにまとめることができました。

(1) 組織の仕組み、ルール、環境の課題
これは、介護施設における「ヒト」を除いた、建物の中にあるもの、見えているもの、それら全てを指します。
福祉用具、テーブル、イスの配置、浴室までの距離、そして業務の流れ、ルールなど、介護施設に存在している「モノ」を(1)としています。
実は、介護施設は、ここが弱い所が多いのです。
管理者は言ってるだけ、「見える化」されていない、マニュアル化していない、そもそもルール化していない、というケースもあります。
新人育成も仕組み化されていないから育成にバラツキが出るのです。

(2) 雰囲気、人間関係の課題
いわゆる、スタッフの仲が悪い、派閥がある、挨拶がなく感じが悪い、など、とにかく雰囲気として感じること、人間関係の良さ・悪さ、です。
そして、人間関係の悪さとは、一部の不機嫌な職員がチームを乱していることがほとんどです。
ここに介入するには勇気か、割り切りか、開き直りが必要です。または信念を持って正しさを主張するしかありません。
ですが、残念なことに、雰囲気の悪い職場での正しさの主張は、むしろあまり良くない結果に終わることが多いのです。

(3) 個人の性格、感情、スキルの課題
個人のスキルとは、知識、技術、態度など、個人から表現されるものです。
ここで私が定義するスキルとは、暗記力と表現力としています。暗記力がなければ仕事の質は落ちます。表現力が乏しければ、周りから信頼されません。
ただ、この課題は、個人的な要因が大きいため、ここにアプローチするには相当なスキルが必要です。
他の記事で詳しくお話ししますが、介護の業界は、この(3)の問題、課題を抱えている人が非常に多く、マネージメントが難しいと言われています。

かなり大雑把に説明しましたが、アンケートなどの方法で、現場の声を集めた場合、表面的な言葉に惑わされずに、まずは、この3つに分類してみてください。

課題解決のアプローチ

では、3つの課題に対して、どうアプローチすればいいのか?
実は、改善のためのアプローチは一つしかありません。
それは、「仕組みで解決する」ことです。仕組みを作る、仕組みを改善する、仕組みとして仕掛ける、ということです。
つまり、まずは問題の根本を突き止め、それを「見える化」し、ルールやマニュアルなどの「仕組み」として整備し、機能させるということです。

それは、(1)の「組織の仕組み、ルール、環境の課題」へのアプローチで、(2)や(3)には当てはまらないのでは、と思うかもしれませんが、そんなことはありません。

たとえば、(2)の「雰囲気、人間関係の課題」については、不機嫌な職員をその場しのぎ、場当たり的になだめるのではなく、「不機嫌を許さない仕組み、ルールにする」というアプローチです。
「不機嫌は禁止」とか「挨拶しましょう、挨拶されたら聞こえる声で返事をしましょう」とか、やってはいけないこと、どのように行動すべきか、明確なルールにしてしまうのです。
ルールにした以上、当然ながら、ルールを破った人には指摘する必要があります。

また、(3)の「個人のスキルの問題、課題」については、「何を覚えてほしいのか?」「どんな行動をするべきなのか」をきちんと見える化、言語化することが大切です。
つまり、マニュアルの整備です。これも仕組みの一つです。
「ちゃんとやってね」とか「介護は答えがないから良い」とか「利用者の尊厳を守って…」とか「その人らしさを…」と抽象的な表現をするから、みんなそれぞれ自己流になってしまうのです。
レベルの高い自己流なら良いのですが、ほとんどの場合、あまりレベルの高いものではありません。
ですから、やはり言語化、基準化すること、つまり「仕組み」が重要なのです。

まとめ

最後にもう一度。組織の課題は大きく3つ。でも、改善のためのアプローチは一つしかありません。
それは、「仕組みで解決する」ことです。

そこで、私から提案です。
ぜひ、まずは次の項目を「仕組み」にしていただきたいです。
①毎月会議を行う(年間計画)
②毎月研修を行う(年間計画)
③新人育成の仕組みを作る(新人育成の3ヶ月スケジュール)
④新人のひとり立ちの基準やテストを作り、合格したらひとり立ちさせる
⑤定期的に面談を行う(最低でも年に2回)
⑥リーダーの役割を箇条書きにして見せる(業務分掌)
⑦臨機応変、様子観察、その人らしさ、ケースバイケース、常識的、といった言葉は使わず、全部、具体的な言葉で示す

まだ色々ありますが、とりあえず、こんなところでしょうか。
はっきりとしたルールがなさすぎて荒れている職員もたくさんいるんですよ。
ルールがあれば、きっとみんな良い子になるのになー。

  • 記事を書いた専門家
  • 専門家の新着記事
知野吉和

知野吉和

介護人材育成アドバイザー・介護教員

新潟県加茂市出身・福祉系の専門学校卒業後、老人保健施設、特別養護老人ホーム、福祉用具貸与事業所、居宅介護支援事業所を経て、ヘルパー2級講座の講師を27歳から始める。その後現場の介護職員を対象とした研修講師を務め、10年ほど前から業務改善の支援を行う。組織改善において、あらためて思うことは、現場職員のスキルアップよりも、やるべきことは、組織のルールづくりです。管理者、リーダーの役割を明確にすることが内部統制、チームビルディング、生産性の向上につながります。感情労働であるからこそ、現場に振り回されないために、ルール作り、組織づくりの基本に立ち返ることをお勧めいたします。

  1. 組織の真の課題は見えていますか?

  2. リーダーには椅子に座って考える時間が必要

  3. 量(数)の後に、質がある

関連記事

PAGE TOP