医療介護福祉の学び情報メディア

介護ココロのケア

アフターコロナを生きる日々に、ちょっと疲れてしまっていませんか?

ケアカレッジ「介護のココロのケア」担当、グリーフケアアドバイザーのマミコです。

2020年、職場のブログで「コロナ禍で思いがけない世界になった」というようなことを書いたことがあるのですが、そこから月日が流れ、今年のGW明けの5/8に新型コロナウイルス感染症が季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に引き下げられ、コロナ以前と同じように見える生活が戻ってきた感じがありますよね?

以前と同じようでありつつも、全く同じ「コロナ以前の生活」になったわけではなく、社会は大きく変化し、アフターコロナ・ウィズコロナの中で模索している日々が続いています。

さらにはコロナウイルス以外にも、ロシアがウクライナに軍事侵攻したことをきっかけに、世界は思っているよりも不安定なんだ…と心が揺れ動いた方もたくさんいらっしゃると思います。
戦争を機にし、燃料費や原材料価格の高騰による値上げなどなど、生活をする上でも疲弊してしまうことも続き、なんだか心が重いと感じている方も多いのではないでしょうか?

環境への変化に強いのは、男性?女性?

未知のウイルスである「コロナ」が世界中で流行し始めた当初、都市の閉鎖や医療ひっ迫のニュースを見て不安を募らせ「コロナ鬱」に罹患する方も沢山いたと聞きました。

分からないものというのは人を不安にします。

当時はワクチンなどもなかったために、自分や自分の愛する人が「コロナに罹ってしまったらどうしよう」という不安もある中で、働き方も今までとは変わって在宅勤務をしたり、予防や感染症対策にいつも以上に仕事の量が増えたりと、不安の中でもみんながそれぞれの場所で頑張っていました。

そこからずっと、なんだかずっと、頑張り続けて今に至るんですよね。

こんなに頑張り続けていたら、疲れてしまうのは当然です。
私たちは「好きなこと・楽しいこと」であっても『過ぎる』と疲弊するのに、そうではないことをいつまでも頑張り続けるなんて、自分が思っているよりずっと、疲れが溜まっているのではないでしょうか?

この数年間の間に、私たちは変わりゆく環境に順応することを求められてきました。

大きな変化を求められたり、大きな出来事の渦中にいるときは案外大丈夫だったりするのですが、緊張が緩んだり日常を取り戻したりした時に、それまでのストレスがドッと出て不調になり、気持ちが揺れてしまうことが多くあります。

実は【環境の変化】というものに対しては、男性より女性の方が圧倒的に強いので(順応性・適応能力が女性の方が高いため)、働き方の変化や社会の変化についていけず男性の方がメンタルを病みやすくなる傾向があります。

男女という性差の違いという面で見てみると、男性は『安定志向』が強く女性は『変化を好む』と言われています。
※あくまで一般論であり、必ずしも性別によってこの通りだという訳ではありません

男性は「お気に入りのラーメン屋」を見つけると連日でもそこに通い続けたり、行きつけの店(よく知っている安心できる場)を持ちたがりますが、女性は「ここのケーキも好きだけど、新しくできた角のスイーツ屋さんも気になるから、次はあっちのお店に行ってみない?!」なんて会話をしているのを聞いたことがあると思います。

また、男性は「思考」(頭で考える)ことが主体なのに対し、女性は「感情」(気持ち)を主にして考えます。

環境の変化で『不安』『怖れ』といった感情が大きく揺れることになると、もともと感情を受け止めて処理することが苦手な男性の方がどうしていいか分からない…とうろたえてしまう事があるのはおかしなことでもなんでもありません。

さらに、感情というのは”勝手に湧いてくるもの”なので制御しようがないにも関わらず、「この気持ちをなんとかしなくては」と思考を使って押さえ込もうとしますが、不安な状況の下では『思考で分析して自分を納得させるデータがない』ので、心がパンクしてしまうことも多く見られます。

※あくまで男女の差という”一般的な性質の面”で話をしましたが、これは「男性性」「女性性」という意味であって、女性であっても「感情よりも思考優位」で男性性が強い場合には変化への順応が難しいですし、逆に男性でも「感情」に敏感な女性性優位な人は変化に対応しやすく自分の不安とも上手に向き合えます。

どちらかといえば環境の変化に強いのは女性だとしても、でもみんな、頑張り続けたら頑張れなくなってしまいます。

先にも書きましたが、コロナで社会生活が一変してからずっと、今度は新しい形で「コロナと共存していく」ために、模索をして頑張り続けているんですもの。
みんな本当に、よくやっていますよね。

頑張り続けている私たちに、なんだか疲れて力が出ないと肩を落としてしまっている方に、今日はちょっとだけ優しい言葉をお届けしようと思います。

「思いがけない穴」が心に空いてしまった時

数年前に手にして以来、時々読み返している一冊の本があります。

PHP出版から出されている「明日はきっといい日になる。」という、様々な分野の人が言葉を寄せている一冊なのですが、この本の中にはとっても優しい言葉がたくさん載っていました。

たくさんの暖かい言葉や心を軽くする考え方などが本の中で紹介されているのですが、優しい言葉の一つとして『置かれた場所で咲きなさい』がベストセラーとなった、シスターである渡辺和子さんの言葉をご紹介したいと思います。

しかし今になって思えば(中略)その経験が私には必要だったのだと。
心を病んだ学生たちが私のもとを訪れます。自分を責め、自分が悪いんだと思い込んでいる。
私は言います。「ちっとも恥ずかしいことじゃないのよ。人間というのは弱いものだから、自分ばかりを責めてはだめ。私だって心を病んで入院していたことがあるんだから」と。自分が経験したからこそ、その言葉に重みが出てくる。優しい気持ちが伝わる。そして「いつかきっと、今の経験が良かったと思える日が来るわよ。私のようにね」と言うと、皆救われたような表情になるのです。
人生には、思いもかけない穴があくことがあります。病気だったり、大きな失敗だったり、あるいは大切な人の死だったり。理不尽で辛いことがいっぱいある。
でも、穴があいてはじめて見えるものもあるのです。はじめて分かる他人の苦しみもあります。そしていつか、穴があいたことを感謝する日がきっとくる。私はそう信じています。
(引用:明日はきっといい日になる(PHP研究所)/渡辺 和子さん著)

渡辺和子さんは、シスターとして長い期間ずっと神様にお仕えして生きてこられました。
それが50歳の時に多忙から少しずつ心が悲鳴をあげ、うつ病で入院するまでになってしまったそうです。

人を助け・励まし・支えて見守り、微笑みを持って接し、愛を与え続けてきたはずの渡辺さんが「神を恨みました」と本の中で書かれていることからも、うつ病で生きる力を失いかけた体験は、とても苦しく重たいものだったのだと思います。

人生には本当に思いもよらぬ「まさか」があったり、予想もつかない「穴」があくことがあります。

今の私は、幸いなことに大きな「穴」に落ちずに生きていますが、これまでの人生でたくさんの「穴」に泣いてきましたし、自分の価値や存在意義が分からずに苦しんだ時期もあります。

苦しまずにいたかったし、ずっと順調で笑っていたかった。
けれど自分が体験したことは「今の私に至るために」必要だったのだろうし、心理学や心のこと、グリーフケアという喪失のことを学ぼうを思ったきっかけにもなってくれたのだから、まぁ、しょうがないかな…と思えるようにはなりました。

とはいえ、人生でまさかのように突然起きる悲しみや痛み、まるで「穴」に落ちて暗闇に閉じ込められるような経験を『したかった』訳ではありませんし、その穴からもがき出して平凡な今を生きられている凪いだ状態の「今」だから

きっと私の人生には必要だった…んだよね?!

なんて言えるんですけれど。
そう言えるまでには、回り道して時間をかけて、ようやくやっと…です。

環境や社会の変化についていけず「心が不調で頑張れない」あなたが、どうか自分を責めすぎませんように。
心が疲れ切ってしまい、不安や心細さに身動きできずに泣いてしまっていたとしても、自分の弱さや寂しさを恥じる必要もありません。

感情(心)というのは、一定ではなく常に揺れるものです。

どうする事も出来ない悲しみや寂しさや不安の中で立ち尽くすしかできない時は、ただそこで「じっと耐えている自分」を許し続け、慈しんで、大切にしてあげてください。

辛いですよね。
苦しいですよね。
どうしたらいいか分からず焦ってしまいますよね。
この憂鬱な気持ちや心細さは本当になくなるんだろうか?と不安でいっぱいになってしまいますよね。

でもね、今はちょっと頑張ることをお休みして「傷ついてしまった心」に優しく寄り添う時間が一番大切です。
悲しい気持ちや上向きになれない気持ちを抱えていることは恥ずかしい事でもなんでもなく、ただ「傷ついてしまった」状態なんです。

転んで骨折してしまったら、無理して動こうとせずにしっかり休養をとって動けるようになるまで無理しませんよね?

心も同じです。

予期せぬ大きな「穴」に落ちてしまうように、思わぬ情勢の変化についていけずに心がポキンと骨折した状態であれば、休んでケアをするのが回復するために一番の近道ですものね。

心というのは不思議で、もうダメだ…と思っていても、ちゃんと回復する力を持っています。

今、気持ちが塞いでいる状態で先が見えずに泣いても、時間がかかることはあったとしても、ちゃんとまた微笑める日がやってきます。
そして不思議と、未来の自分は大きな問題を振り返って「あの問題があったから今があるよね」などと、過去を優しく肯定したりすることすらできるようになります。

今、うーーんとしんどいかもしれませんが、人生の中で「予期せぬ穴」に落ちてしまったんだなぁ、と頑張れない自分を責めずに抱きしめるようにしてあげて欲しいと思い、本の中の優しい言葉をご紹介しました。

ずっと気を張っている状態が続いたり、未来が不安だったり、経済的な面で心を押しつぶすような悩みがある中で、今日もあなたが一生懸命生きていることを、寝る前にほんのちょっとでいいので「お疲れ様。今日も頑張ったね。」と自分に優しく声をかけてあげて、自分を大事に扱ってあげられますように。

  • 記事を書いた専門家
  • 専門家の新着記事
マミコ

マミコ

グリーフケア・アドバイザー

株式会社ドットコム・マーケティング在籍。 2021年、グリーフケア・アドバイザー1級取得。 2024年、動物医療グリーフケア®「ペットライフグリーフケアアドバイザー」認定。 人生で最もつらく答えのない苦しみに対峙するのが喪失体験です。『哀しむことは愛すること』という言葉を胸に、愛で見守り・愛で受け止め・愛で支えるグリーフケアを目指しています。 グリーフケア分野以外のお悩み相談・カウンセリングでは、自分に優しさを向けて思いやり、自己受容する生き方のサポートを得意とする。

  1. (動画あり)自分に厳しくしてしまいがちだからこそ、自分を癒せる自分になろう!~自分を愛し、自分に優しくする方法~

  2. 私たち人間も「生もの」だから傷むもの。繊細でデリケートな自分は優しく扱わなくっちゃね。

  3. ただ存在していることに「価値がある」ということ ~そう言われても無価値感を持ち続けているあなたへ~

関連記事

PAGE TOP