医療介護福祉の学び情報メディア

専門家コラム

看護/介護の現場にこそ心のケアが必要な理由

飲み込み続けた感情から氣づいたこと

「泣きたいわけじゃないのに、仕事の帰り道に涙が溢れ出す」「何だか分らないけれどモヤモヤする」                                                         「なんでこんなことでイライラするの」「笑っているけど本当は傷ついている」
「お腹は空いていないのに過食が止まらない」「本当は違うと思うのに自分の気持ちを言えない」                                                「具合が悪いのに休むと言えない」「家族との時間を大切にしたいのに仕事を優先してしまう」                                                         医療福祉の現場で働いていると、こんな気持ちになることはありませんか?
患者さんの前では冷静に、職場では社会人として感情的にならないように空気を乱さないように。
無意識に怒りも、悲しさも、不安も全部飲み込んで。いつの間にかそれが当たり前になっている医療従事者さんは決して少なくないでしょう。
医療介護の現場は、常に判断と責任が求められる仕事です。患者さんの安全安心が最優先。そのため、自分の感情を横に置いて対応する場面が日常的にあります。                                                          それは、プロとしてとても大切なことではありますが、その状態が長く続くと少しずつ心と体に変化が起きていきます
このような気持ちは決して弱さではありません。心が疲弊してSOSを出しているのです!

医療従事者は感情迷子になりやすい

看護・介護の仕事では、対面で顧客をもてなす「サービス業」の要素を強く持つ職業で、高度な専門知識・技術を提供する「専門職」でもあります。                                                                     利用者・患者さんを尊重し、自立支援や治療を目的とするため、接遇スキルが重要視される「対人援助のプロ」とも言えます。それ故、
・患者さんの前で不安な顔はできない
・動揺しても冷静に対応しなければならない
・自分の感情より相手の安心安全が優先                                                                                     
そんな場面が毎日のようにあります。怒っていても笑顔で対応。悲しいのに「大丈夫です」と言ってしまう。辛いのに平気なふりをする。                            
そんな状態が当たり前になり、いつの間にか自分が何を感じているのか分からなくなってしまう、感情が迷子の状態になっていきます。

「べき思考」に縛られていました

振り返ると私は長い間、「べき思考」「~であるべき」「~でなければ」に縛られていました
仕事は休んではいけない。弱音を吐いてはいけない。人に頼ってはいけない。甘えてはいけない。
看護師なんだから口答えしてはいけない。母親なんだからしっかりしなければいけない。
母子家庭なんだから父親の分も頑張らなければいけない。                                                              
自分で決断したことだから弱音を吐いてはいけない。自分は能力が無いのだから何倍も努力しなければ人並みになれない。                                                                                                 看護師という仕事に就いてから特に、頑なに信じてきたその思い込みが、何の意味も持たないという出来事が起こりました!
                                                                                                          
子ども達が不登校になったのです。本当は側にいて、子ども達の気持ちを黙って聴いて寄り添ってあげることができたら良かった。
でも、私の頭の中にはまだこんな言葉が浮かんでいました。                                                                                       
「今日は人がいない。仕事を休むわけにはいかない」「仕事を休んだら生活していけなくなる」
そして私は子どもに言ってしまいました。「学校に行きなさい!」
あんなに頑張ってきたのに・・・大切な我が子がこんなことになってしまって・・・                                                     
これまで信じてきたこと、多くの犠牲を払ってきたこと、我慢してきたことに何の意味があったんだろう?                                                        
思考がグルグル巡り悶絶した長い冬の期間でした。あの頃の自分の心の内面と、子どもの感情を分ろうとすると・・・・・どちらも痛々しくて今でも思わず抱きしめてあげたくなります。

心の背景

その後、心理学を学ぶ中で自分の心の背景に気づきました。私は自己愛性パーソナリティ傾向の強い親のもとで育ちました。
子どもの頃から親の機嫌に左右され、価値観に合わせて生きることが当たり前でした。親から傷つけられる言葉や態度が繰り返されると、やがて諦めの境地に入りました。                                                                                            抵抗することも気持ちを伝えることも止め、心が凍りついたまま生きるようになりました。
心理学では、これをフリーズ(凍結)反応と呼びます。私も長い間、自分の気持ちが分かりませんでした。
自分の気持ちが分らず何をしたいのか分からず、いつも人の意見を優先し周りに振り回されて生きてきました。

心は感じ切ることで整う

心理学を学び、心のトレーニングを続ける中で、私は少しずつ変わっていきました。
今は、何か失敗しても必要以上に自分を責めず、ネガティブな感情に飲み込まれず、淡々と仕事に向き合えるようになりました。
そして何より大きな変化は、『私はどうしたいの?』と、自分の気持ちに問いかけられるようになったことです。
長い間、親の価値観や周囲の期待に合わせて生きてきた私が、ようやく自分の人生の舵を取り戻した感覚を感じはじめています。

ネガティブ感情は出し切ると薄れる

怒り、不安、悲しさ、悔しさ、ネガティブな感情は、感じ切ることで自然に薄れていきます。
赤ちゃんを思い浮かべてみてください。お腹がすけば泣き、眠ければ泣き、不快なら全力で泣きます。
そして泣き切ると、不思議とケロッとしています。感情を出し切ることで、自然に消化しているのです。
大人も本当は同じなのです。感じないようにしている。なかったことにしている。考えないようにしている。
そうしていると、感情は消えるどころか、心の奥に溜まり続けて、更に大きな問題や課題をあなたに繰り返し何度でも起こしてしまいます。                                                  あなたの心の奥底で、未消化な感情の火種が蓋をされて、くすぶり続けていませんか?

看護師・介護士・医療従事者にこそ心のケアが必要

ネガティブな感情は、あなたの敵ではありません。悪いものでもありません。
「無理しているよ」「少し立ち止まって」そう教えてくれる、心からのSOS!サインです。
医療従事者の仕事は、人の命や人生に深く関わる尊い仕事です。だからこそ、多くの人が自分のことを後回しにしてしまいます。
でも、あなたの心もまたかけがえのない大切なひとりの人間として、大切にケアされる必要があります。
ほんの少し、1分だけでもいい。『今、私は何を感じているのだろう』そう自分に問いかける時間を作ってみてください。
それが、これからも看護・介護という仕事を続けていくために必要な心のケアの入り口になると私は思います。このコラムが医療従事者の皆さんのお役に立てれば幸いです。

  • 記事を書いた専門家
  • 専門家の新着記事
時田幸子

時田幸子

看護師

会社員、フリーター、主婦を経て看護師国家資格を取得。看護師歴23年。 病院・(特養・有料)老人ホーム・サ高住・ディサービス・訪問看護ステーション勤務。 多数の心理学を学びセミナーを主催。ガン患者様・ご家族様へ傾聴ボランティア歴10年。現在は講師業、セミナー主催、個人カウンセリング&LINE相談活動中。 NPO法人日本ゲートキーパー協会認定講師 ・ 一般社団法人日本ストレスチェック協会認定SMFT ・アンガーマネージメントキッズインストラクター・ 再決断療法心理カウンセラー・トラウマ解消心理セラピスト・ パステル画でイラストや曼荼羅アートを描くことや己書という筆文字を通して、心の癒しと自己表現する場作りのお手伝いも楽しんでいます。

  1. 看護/介護の現場にこそ心のケアが必要な理由

  2. 静かに増えている「距離感ミス」という新しい課題

  3. 境界線が引けない本当の理由と境界線を守るための実践策

関連記事

PAGE TOP