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専門家コラム

命を見送る心の準備

生きるとは死ぬとは

死ぬって言葉は考えたくもないしタブーとされている世の中。しかし、大切な方が急に病気になったり、死を目の前に感じた時に受け入れられず、こんなはずじゃなかったと見送った後に後悔してしまう。そんな経験はありますか?

私自身、医療介護現場で働いてきて、ずっと自分の中での葛藤がありました。
特に延命の時代、重度の病気を抱え、苦しんでいてやっと逝ける(苦しみから解放される)と思った瞬間、延命処置で生き返され、死にたくても死ねない。そんな患者さんに「いつになったら死ねるの?何度苦しめば死ねるの?人を苦しめるのが病院なの?」と聞かれたことがありました。それから治らない病気なのに、死に方さえ自分で選べないのかという疑問がわき (自殺って意味じゃないよ)、その時から、私は命を見届ける専門の看護師になりたいと思っていたのかもしれません。

普段から考えておくことが大切

誰もが迎える死について、最後の命の選択をどうするか日頃から考えることが大切です。
大切な方がいきなり病気にかかったり、死を目の前にするとパニックになりますよね。
高齢者の場合は、ご本人の意思がわからず最後はご家族が決めざる得ない状態で
ご家族も、ご本人より意向を聞いておられる方は決めやすいのですが、それ以外の方は悩まれ、これが正しいのかと?葛藤される方もいます。
また、ご家族やご本人がいざ急に何かが起きた時、医師から説明を受けても、よく意味がわからないので、どうしたらよいかと相談受けることが多くあります。

そのような場合

  1. 急なことで、説明を受けてもパニックで事実を受け入れられない。
  2. 説明をうけても言葉が難しくてわからない。(医療的な言語って難しいですよね)
  3. そもそも経験したことがないからわからない。

普段から病気になったら…とか考えたくないことですし、命の話し合いがなされていないことも多いです。そもそも医療的な選択肢は何があり、どのような意味があるのかをしらない。
例えば、普段から、延命って何?人工呼吸器って?経管栄養ってどんなことをするの?また介護認定を受けていない方は、介護を受ける手続きをと言われてもどこにいって、誰を頼りにすればいいのかもわからない。
人は急に事故になったり、病気になったり、いつどうなるのかわからないからこそ、どのような支援や選択肢があるかを知っておくことが大切だと思います。

アドバンスケアプランニング(ACP)

アドバンスケアプランニング(ACP)という言葉知っていますか?
病気や死に向かい合う時に後悔しないように、大切にしていることや望み、どのような医療やケアを望んでいるか、自分自身や信頼する人たちと考え話し合ったりすることをいいます。
私たち専門職は、命には最後があり利用者がどのように望むのか聞き取ることは大切で、利用者が施設に入所する時に、施設長や相談員と最後の命のことをしっかりお話しします。
実際に利用者の意向がわからないことが多いので、家族にはその都度説明をし、気持ちをそろえていくために、何の病気を持っていて、最後どのように過ごすことを望まれるか?何度も何度も話し合う。亡くなる前にしっかり心をそろえていく。
国はACPを進めており、2024年診療報酬改定でも病院に入院する時に最後に望む医療やケアについてご本人やご家族に聞き取るようになってきました。(小児等一部は除外)

皆さんはきちんとご家族に説明できる知識ありますか?
もし出来なくても、誰を頼っていけばよいのかアドバイスできることが大切です。

出会った時から人生会議

私は利用者が入所した(出会った)時には、それまでの医師や看護師等からいただいた情報(情報提供書や看護サマリー)をご家族に丁寧に伝えています。特に病歴(現病歴)、加齢の変化について説明します。心不全があれば治らないので急に亡くなるかもしれない、認知症があれば最後食べられなくなることも考えられる、そのようなお話をし、実際にご家族が全部の病歴を把握していることは少なく、そんな病気があるのですねと認識されます。

そして、施設に入所後すぐに「いつ命が亡くなるかわからない」ことも伝えます。

入所時に急に死ぬことを言われると戸惑う方もいますが、「私自身も明日事故になるかもしれない、人はいつ病気になり亡くなるかもわからない。大切な利用者の命をお預かりするからこそ、きちんと向かい合って命のお話をしておきたい」と話します。

そのために関わる医師や看護師、ケアマネ、栄養士、介護職…などの役割や体制をお伝えし、その都度何かあれば連絡し、ご家族と一緒に考え精一杯役目を果たせるように努めますねと話すと安心されます。

覚悟をもって命の問題をタブーにせずに思いを共有することがスタート。

私たち自身がまず命に向かい合うことが大切ですね。

情報共有の大切さ

利用者には主となるご家族の他に、沢山の関わりがある方がおられます。
それぞれいろんな価値観や利用者への思いを抱えています。どの感情も間違いではなく、しかしその利用者のためにどうあるべきかはすり合わせていく必要があるため、ご家族様には日ごろから話し合っておく大切さや、わからないことは聞いてほしいと話しておきます。
また、最近は身寄りがない方もおられ、私の施設でも最後は施設のトップに命が任されることもあり、何度も話し合いながら命を支えていきます。医師との情報交換も大切で、介護施設や在宅でも生活の中の家族などの関係性や意思決定も共有しておかなければ、最後の支援の方向性も変わっていきます。
この業界は他職種の役割の認識不足だったり、情報共有が上手くいかないことも多いです。人間関係の難しさをよく言われることが多いですが、日々のケアの仕方だけではなく、まず命の本質的なことがあってからこその支援。医療従事者をはじめから巻き込みしっかり伝えていくことをお勧めします。多職種で情報や思いを共有していくのも私たちの大切な役目です。
現在の一瞬一瞬の関わりや過ごし方を大切にすることで、もしもの時の後悔を最小限していくことが出来、安心して過ごすことが出来るのだと思います。

さいごに

今回は命の最後についての心の準備についてお話ししました。現在在宅や施設でも看取りをする方は増えています。死ぬって誰にも起こりうることなので、先立っていく方には、後悔する人生で最後を締めくくってもらいたくはない、残されるものの気持ち大切にしたい。私たちも同じく自分や大切な家族のことの命と向かい合ってみるのもよいと思います。
次回は具体的な看取りの実際について触れてみたいと思います。読んでいただきありがとうございました。

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真鍋哲子

真鍋哲子

施設看護師 異端児ナース

福岡県北九州市出身。高齢者施設で看護師をしながら施設看護師や介護職の仕事に形をつけたいと講師業やイベント等奮闘中。日常の医療介護にまつわることをリアルにわかりやすく伝えます。 外科、整形外科、内科、精神科などを経験し、2002年より高齢者施設(特養等)の看護師として勤務。生活の場での看護・介護のやりがいを感じ介護現場でその人らしさを大切に多職種チームで命を最後まで見届ける支援に力を入れています。全国高齢者施設看護師会講師。地域では障がい者の落水洋介らと共に株式会社PLSで活躍中。

  1. 命を見送る心の準備

  2. 何のために?自分の人生楽しいですか? 

  3. 【生活の中の看護とは?総論】

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